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健康診断結果の数値を気にする必要はない!?

 「人生100年時代」と言われるようになり、ますます「健康」に対する人々の関心は高まる一方である。「健康」に関するテレビ番組や雑誌類など、やや氾濫気味の様相を呈していると思う。そのような中、勤労者の多くは定期の健康診断(以下、健診)結果や人間ドック健診結果の数値を結構気にしているのではないだろうか。その理由は、正常でない検査数値が出た項目には、赤字で数値が表示されたり、「要検査」という注意喚起がなされたりするからである。つまり、その項目は「健康に問題がある」、もっとはっきり言えば「病気である」を意味するのであるから、ほとんどの人はどうしても気にかかってしまうことになる。

 

 かく言う私も今年の健診結果の数値で気になった項目が二つあった。その一つは「血圧」。平均で最高値が148mmHg(基準値90~129mmHg)、最低値が93mmHg(基準値84mmHg)で、高血圧気味であった。しかし、この数値はある種の「白衣高血圧症」の症状だったのではないかと思う。というのは、当日の血圧検診者の女性が偶然にも二人とも知り合いの方々だったので、私がやや緊張してしまったのが原因だと思う。普段自分で血圧を計測している際は基準値内なので、今回の数値に心配はしていない。

 

 ただし、もう一つの「中性脂肪」は多少気がかりだ。何と175㎎/dl(基準値30~149㎎/dl)という高数値だったのである。因みに昨年と一昨年は基準値内の数値だった。私は次第に心配になってきた。

 

 そこで、以前から積読状態だった『血圧は147でも健康体!?』(中原英臣・大櫛陽一著/洋泉社)を早速、通読してみた。すると、今から4年前に日本人間ドック学会が中間報告した「健診の新基準値」(通称「新ドック基準」)が示されており、従来の健診の基準値を大幅に緩和しているではないか!私はこの根拠をより理解するために精読した。次は、私なりに理解した内容の一部をまとめたものである。

 

 今回の日本人間ドック学会の「新ドック基準」は、「新たな健診の基本検査の基準範囲日本人間ドック学会健保連による150万人のメガスタディー~」という題名からも分かるように、健康保険組合連合会との共同研究事業の成果である。実際には、調査対象とした人間ドック健診の受診者150万人のデータの中から国際的基準による諸条件を満たした「健康人」34万人を抜き出し、さらに病歴のある人や薬を飲んでいる人等をふるい落とした「超健康人」1万人ほどを抽出して、その人たちの各検査値の分布をもとに基準範囲を定めたらしい。

 

 ところが、この「新ドック基準」に対しては報告直後から賛否両論が起こった。現行の基準値を決めた臨床系の各専門学会の関係者からは、厳しい反論や完全否定の反発等があった。それに対して、筆者たちは予防医学的な側面での懸念は認めているが、「現行の基準値と比較して母集団が多いことで男女別、年齢別の策定ができたのは十分に評価できる」と表明していた。その後、反発するセクターへの配慮からか、日本人間ドック学会の主張がトーンダウンしてしまったという。私はこれらの騒動の内実を知り、本当のところはどうなのかと困惑してしまった。

 

 そこで、特に「中性脂肪」の「新ドック基準」とそれに関連する内容が記述されている箇所を再読してみた。すると、「中性脂肪」(トリグリセライド=TG)の「新ドック基準」(男性/30~64歳)は39~198㎎/dlになっており、今回の私の数値175㎎/dlはその範囲内であった。また、「中性脂肪」は体内エネルギーの調整役をしており、数値がとんでもなく高すぎると膵液の分泌が増えすぎて急性膵炎になるが、心筋梗塞脳卒中の発症には関与しないことが分かってきたらしい。さらに、「中性脂肪と原因別死亡率の関係を示すデータ」によると男女とも150㎎/dl以上での死亡率は低下しているので、日本動脈硬化学会の主張している「150㎎/dl以上は脂質異常症」を信用して筋肉を溶かすなどの副作用のある中性脂肪低下薬(フィブラート)を飲まされないようにと書いている。そして、これらのことから現行の基準値範囲外でも気にする必要がないとのこと。私はちょっと安心した。

 

 それにしても、臨床系の各専門学会の基準値を厳しくしたがるのだろうか。本書では「それは病人を増やしたい医師や製薬会社の方便の可能性が濃厚だ」と指摘している。私はこのような実態だから、国民医療費の膨張が止まらないのだと妙に納得してしまった。それとともに、もしかしたら多くの国民は「自分は病人だ」と自己規定して、不必要な治療を受けたり薬を飲んだりしているのではないだろうか。