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〈勝負脳〉とは何か?その鍛え方の秘訣は?

 最近、各種スポーツの世界大会レベルにおいて日本人選手の活躍が目立つようになった。特にバドミントンや卓球等は男女とも世界のトップレベルになってきている。この背景や要因はどこにあるのだろうか。もちろんフィジカルやテクニックのトレーニングの成果が現れてきたこともあろう。しかし、今まで「日本人はメンタルが弱い」と言われてきた面の強化策が功を奏してきたのではないかと私は思っている。自分のメンタルの弱さを克服したいと思っているスポーツ選手は、きっとその強化の方法を知りたいと思っているのではないだろうか。

 

   そこで、今回はこのメンタル面の強化の方法を分かりやすく説いている本『〈勝負脳〉の鍛え方』(林成之著)を取り上げて、その内容を簡潔にまとめてみたい。メンタル面の強化を望んでいる方に御一読いただければ幸いである。

 

 まず〈勝負脳〉とは「勝負に勝つための戦略を練る知能」のことで、脳外科医である著者の造語である。本書は、「勝負」の分かりやすいモデルとして主にスポーツを例にとって〈勝負脳〉を鍛え、全開に働かせるための方法を示しているが、その内容はスポーツ以外のビジネスや勉強等にも役立つものになっている。

 

 次に、脳科学的な知見について。一つ目は、脳内の海馬回をはじめとするドーパミン系神経群が「心」の生まれる場所であること。二つ目は、このドーパミン系神経群(著者は「モジュレータ神経群」と命名)には「意識」「心」「記憶」の連動を適切に調節する働きがあること。特に脳が持っている知能の一つである〈勝負脳〉は、もっとも「心」に強く影響する知能であること。三つ目は、人間の「記憶」はすべて「イメージ記憶」によって行われており、特にスポーツにおいて「イメージ記憶」は大変重要であること。四つ目は、知能を高めるためには「ものを覚える」→「忘れた情報を脳内で再構成する(イメージ記憶をつくる)」→「その内容を表現する(その中に運動することも含む)」→「そこから独創的な創造力を生み出す」という四段階があること。そして、この四番目の段階の能力こそが〈勝負脳〉であり、今の日本人に最も欠けている能力であること、等々。スポーツや医療の具体的な場面を題材にして分かりやすく説明しているので、以上にまとめたような脳科学的な知見についての記述も楽しみながら読み進めることができた。

 

 さらに、本書の核心である〈勝負脳〉について。著者は〈勝負脳〉の鍛え方として次の九つの秘訣を具体的に披露している。

○ 「サイコサイバネテックス理論(目的実現理論)を応用せよ」

○ 「最初から100%集中せよ」

○ 「相手の攻撃は最大のチャンス」

○ 「相手の長所を打ち砕け」

○ 「相手の立場になって勝ち方のイメージをつくれ」

○ 「脳の温度上昇に注意」

○ 「脳の疲労は最大の大敵」

○ 「勝負の最中にリラックスするな」

○ 「緊張しすぎた時の対処法」

 

 これらのテーマで書かれた秘訣の内容はどれも納得させられるものであり、私にとっても有益なものであった。メンタル面の強化を図りたい方には、ぜひ本書に目を通されることを勧めたい。

 

 終わりに、上述した九つの秘訣の中でも私の記憶に深く刻まれた幾つかの内容について、参考のために簡単に紹介しておこう。

 

 一つ目は、サイコサイバネテックス理論の中で述べられている目的達成の三つの作業。それは「目的と目標を区別する」→「目的達成の具体的な方法を明らかにして実行する」→「目的を達成するまで、その実行を中止しない」である。当たり前と言えばあまりに当たり前のことであるが、意外と私たちは日常生活の中で具体的に実践していないのではないだろうか。

 

 二つ目は、運動能力に最も影響を与える臓器は「脳」であることを認識し、脳の温度上昇に伴う自律神経機能の低下への対策として、体中を流れる血液を冷やしたり、自律神経が敏感に反応する場所を冷やしたりすることが大切であること。また、脳の疲労回復策として、好きな香りを嗅ぎながら家族や友達と楽しい会話をしたり、興味・関心をもって何事にも前向きに楽しく取り組んだり、疲れない姿勢を意識したりすることが重要であること。

 

 三つ目は、緊張しない方策として、呼吸法を活用して副交感神経の機能を高めたり、伸筋と屈筋の協調を意識したり、笑顔を絶やさないようにしたり、結果を意識しすぎないようにしたりすることが肝要であること。

 

 私にとってはどれも今まで無意識に行ってきた内容であるが、本書で改めて意識化できたことは大きな収穫であった。今後、テニスのゲームに臨む際にはこれらの秘訣を意識的に活用していきたい。