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「総合型地域スポーツクラブ」とは?~その理念と我が県内の現状について~

   「総合型地域スポーツクラブ」(以下、「総合型クラブ」)という名称を聞いたことがある人はまだまだ少ないのではないだろうか。

 

    そこで今回は、「総合型クラブ」の理念と我が県内の現状について書いてみたい。

 

   「総合型クラブ」とは、「地域住民が生活する地域にある施設を主たる活動拠点として、参加する会員の会費で運営が賄われていることを前提に、複数の競技種目が行われたり、複数の世代で行われたりするスポーツクラブ」のことである。「多種目・多世代・多志向」や「地域住民の自主的・主体的な運営」等が、その主な特徴である。

 

    元々ヨーロッパ諸国では、地域住民の多くがその土地の「総合型クラブ」に加入し、生活の中にスポーツを根付かせている。そこで、生涯スポーツ社会を目指す日本も、ヨーロッパ諸国に見習い、クラブハウスをもつスポーツコミュニティづくりを導入しようとしたのが始まりである。

 

 国のレベルでは、平成12年9月に策定された「スポーツ振興基本計画」において、「総合型クラブ」の全国展開を最重点施策と位置付け、平成22年までに全国各市区町村に少なくとも1つの「総合型クラブ」を育成することを目標としていた。また、県のレベルでも、平成15年3月に策定された我が県の「スポーツ振興計画(前期)」において、「総合型クラブ」の設置(平成22年までに全市町村に少なくとも1つ、平成29年までに全中学校区に少なくとも1つ)を目標としていた。ただし、平成23年3月に策定された我が県の「スポーツ振興計画(後期)」においては、平成29年までに県内68の「総合型クラブ」の設置を目指すことに改訂していた。

 

    その他にも、国レベルの「スポーツ立国戦略」「スポーツ基本法」「スポーツ基本計画」等において、総合型クラブ育成による新たなスポーツコミュニティ=「新たな公共」の形成や、地方公共団体の役割として「地域スポーツクラブ」(「総合型クラブ」を含む)への支援等が謳われるなど、ライフステージに応じたスポーツ機会の創造、つまり生涯スポーツ社会の実現に対する具体的な施策が明示されており、「総合型クラブ」の積極的な創設と円滑な運営等は喫緊の課題になっていたのである。

 

 では、それらの施策に対応した我が県内の現状は、どのようになっているのであろうか。

 

 平成30年度末において県内に設立している「総合型クラブ」数は、41団体。その内、NPO法人格を取得しているのは4団体。ただし、県下20市町の内、4市町が設立数0。また、創設したものの、地域における人口減少や少子高齢化に伴って参加者数が減少したり、運営役員が高齢になったりして、主催事業や活動等が停滞しているクラブが少なくない。中には、ほとんど内実が形骸化して名ばかりのクラブもある。今、改めて「総合型クラブ」の存在意義が問われているのである。

 

  私が現在勤務している各種スポーツの普及・振興を図る事業を行う公益財団法人内には、県内の「総合型クラブ」の創設や運営等への支援とともに、県民が明るく豊かで活力に満ちた生活が送れるようにスポーツを通じた仲間づくり・環境づくりへの支援を行うことを目的とする我が県の「広域スポーツセンター」が設置されている。その主な事業は県からの委託費で賄われているが、当法人の自主事業も行っている。今後、我が県において生涯スポーツ社会の実現をより図るために、これらの事業にさらに力を入れなければならないと、私は改めて使命感に燃えている。