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『東京都の地域スポーツクラブに関する平成29年度調査研究報告書』から学ぶ

   東京都に設立している「総合型地域スポーツクラブ」は、創設までの経緯や諸事情を鑑み、敢えて「総合型」という冠を省いて「地域スポーツクラブ」と称している。その『東京都の地域スポーツクラブに関する平成29年度調査研究報告書』(公益財団法人・東京都スポーツ文化財団発行)を読む機会を得た。

 

 そこで今回は、その報告書の内容概要を紹介しつつ、私なりの所感をまとめてみたい。

 

 まず、「クラブと学校との連携の実態」について。現在、学校との連携を行っているのは約55%のクラブで、その連携方法は学校体育施設を利用したり、イベント(運動会など)を学校と共同で実施したりしているクラブが多い。また、学校運動部活動の全部或いは一部を担っているクラブは約20%ある。これらの連携の成果としては、学校との良好な関係構築や子どものスポーツ活動の場の充実を挙げているクラブが多い。反面、課題としては、クラブスタッフの不足を挙げているクラブが多い。その他、約30%のクラブが、連携に対する教員の理解不足や事件・事故の際の責任の所在不明確などを課題と感じているらしい。

 

  次に、「連携に対するクラブの意識」について。7割を超えるクラブが学校との連携を「行いたい」「やや行いたい」と回答している。しかし、そのうち約30%のクラブが連携に至っていないとのこと。また、連携を実施していない理由としては、学校や行政などからの要望がないこと、クラブスタッフ不足、学校との関係性の希薄さ、学校や教員の理解不足を挙げている。さらに、「学校側からの要望があれば教えてほしい」と回答しているクラブが多い。これらの調査結果から、学校とクラブがそれぞれの課題や要望といった情報を共有することが相互の連携を深めるためには重要だと言える。

 

  三番目に、「クラブの後継者不足やクラブ運営スタッフの世代交代」について。クラブの後継者不足に問題があると回答したクラブが80%以上を占め、大きな課題になっている。また、「クラブの諸事業の運営を手伝うボランティアが必要である」と回答したクラブが最も多く、「いずれの役割のスタッフも必要である」と回答したクラブが70%を超えている。これらの調査結果を見ると、多くのクラブでは役割に関係なく全体的にスタッフが不足している実態がよく分かる。さらに、クラブではクラブ運営やスポーツに関する専門的な知識を持つ人よりも、ミッションへ共感してくれる人や地域貢献への意欲がある人、スポーツの意義を理解している人を運営スタッフとして求めている。そして、全体的な傾向としてはクラブ会員の運営参画意識が未だ十分に醸成されていない現状も伺える。なお、「クラブ後継者が確保できている」或いは「クラブ後継者不足の深刻度が低い」と回答したクラブでは、会員の運営参加意識や総会等への出席率が高い傾向にある。また、運営スタッフによる声掛け、ホームページによる募集、インターンシップの受け入れなども行われており、これらの事柄が後継者確保に向けた取組として有効であることが推察される。

 

  最後に、非会員のクラブ認知度やスポーツの振興や地域コミュニティの活性化に関するミッションへの理解や共感、期待感が依然として低い実態のなか、健康の保持増進に関するミッションへの理解や共感、期待感が肯定的に捉えられていることから、将来的にクラブ会員となる可能性のある地域住民は少なからず存在することが明らかになっている。今後、クラブ会員を増やすためには、非会員へのミッション全般への理解や共感、期待感の醸成を促すようなマネジメントを行うことが重要になると思った。