ここ数回の記事で、「ウォーキング」がどの世代にも親しみやすい運動であることとか、目的別の「ウォーキング」の効果的な活用法とかについて言及してきた。そのような中、休日に近くの書店を訪れて何気なく気になる本を探していた時、『やってはいけないウォーキング』(青柳幸利著/以前の記事で取り上げた『なぜ、健康な人は「運動」をしないのか?』の著者)という本を見つけた。本書は基本的には著者が唱えている「メッツ健康法」の考え方を述べているので、前著とほとんど同様の内容になっている。ただし、本書の内容は「ウォーキング」に関するものに絞られているのが特徴。
そこで今回は、私が本書を読んで特に参考になった「やってはいけないウォーキング」や「やったほうがよいウォーキング」「ウォーキングを続けるコツ」等の内容概要を紹介しつつ、簡単な所感をまとめてみたい。
まず、「やってはいけないウォーキング」について。「やってはいけないウォーキング」とは、「誤った認識で行っているウォーキング」のことである。例えば、ある老舗旅館の女将は毎日一万歩以上歩く生活を続けていたにもかかわらず、骨粗鬆症になってしまったらしい。その原因は、運動の刺激が弱かったから。つまり、歩き方の「強さ」の観点が抜け落ちていたからである。「毎日一万歩を歩いてさえいれば健康を維持できる」という認識は誤っているのだ!また、「歩けば歩くほど健康になる」という認識も大きな間違い。運動のしすぎは健康を害するのである。なぜなら、免疫力が低下するから。「運動選手はよく風邪をひく」ということを聞くが、これは運動選手がハードなトレーニングをするために、免疫力が下がり、ウィルスや細菌等の抗原を撃退できずに病気になりやすいからである。
次に、「やったほうがよいウォーキング」について。上述した例のように、これまでの「歩数論」は当てにならない。では、どのような指標に基づいたウォーキングが効果的なのか?それは…「8000歩/20分」という黄金律!である。少し解説を加えると、1日24時間の歩数は8000歩にし、中程度の運動を行う時間は20分にするという指標に基づいたウォーキングを実践するのが効果的であるという考え方。では、「中程度の運動」とはどの程度の運動強度なのか?それは…「なんとか会話ができる程度の速歩き」だ!昨年の12月13日の記事『「病気をつくる運動」より「健康をつくる運動」を!!』で紹介した運動強度を表す「メッツ(METs)」という単位を使えば「3~6メッツ未満」、別の表現をすれば「個人の最大酸素摂取量の40~60%に相当」ということになる。運動例としては、「やや重い家事・速歩き・山歩きなど」である。以上をまとめると、「1日8000歩の内、なんとか会話ができる程度の速歩きを20分行うようなウォーキングが健康には効果的」という結論になる。
さらに、「ウォーキングを続けるコツ」について。一つは、「8000歩/20分」ウォーキング生活を続けるために、次のようなステップを踏むように勧めている。
① できれば身体活動計を使用して、あなたの今の状態を知る。
② 今の生活①と理想の「8000歩/20分」と比べてみる。
③ あなたの生活で「足りない部分」を補う。
④ 毎日、記録しながら続けていく。
もう一つは、全国の体験者からの実例を基に、次のような続けるコツを紹介している。
① 活動記録を「見える化」する。
② 一緒に頑張る仲間をつくる。
③ 身体活動計の「バンザイマーク」を励みにする。
④ 「足踏み」でもOKと軽く考える。
⑤ ポールウォーキングは、お勧めウォーキングの一つ。
どんなに健康を守るために有効なウォーキングでも、最低2か月は続けないと長寿遺伝子がONにならない。また、2か月間やめてしまったら元に戻るらしい。とにかく細々とでもよいから、長く続けることが大切なのである。
最後に、「運動と食事」について。生涯にわたって健康を維持するためには、「ほどほどの運動」と「ほどほどの食事」の二つが重要である。「ほどほどの運動」を表す数字が一日「8000歩/20分」なのに対して、「ほどほどの食事」を表す数字は毎食「腹八分目」。「ほどほど」に身体を動かし、「ほどほど」に食べる毎日を心掛けることが肝要なのである。最終的な結論としては、健康に関することを始め、何事においても「中庸」(いい加減!?)の精神をもって行動することが大切ということかな…。