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「アダプテットスポーツ(障がい者スポーツ、パラスポーツ)」のもつ特性について

   前回の記事で、車いすバスケットボールという障がい者スポーツ(パラスポーツ)体験に触れた内容を取り上げた。その記事を執筆中に、1年ほど前にある研修会で体験したことを思い出したので、今回はその時の体験内容と所感を思い出しながら書いてみたい。

 

 ある研修会での体験というのは、1年ほど前に私の現在の職場で行われた県内の総合型地域スポーツクラブ(以下、総合型クラブ)の「意見交換会」と「総合型クラブサミット」という研修会において、「ボッチャ」という障がい者スポーツ(パラスポーツ)と初めて出合った時の体験のことである。ただし、この時は講師の大阪体育大学教育学部の曽根先生が障がい者スポーツ(パラスポーツ)のことを、「アダプテットスポーツ」という用語を使われて講義や指導をされた。「アダプテットスポーツ」というのは、「やる人に合わせたスポーツ」(Adaptされた身体活動)という意味なので、障がい者スポーツやパラスポーツを包含するような概念として使われたのだと思う。

 

 その時に私が初めて体験した「ボッチャ」というアダプテットスポーツとは、「ジャックボール(目標球)という白いボールに、赤・青のそれぞれ6球ずつのボールをいかに近づけるかを競うスポーツ」のことである。1984年からパラリンピックの正式競技として行われ、男女の区別なく障がいの程度で4つのクラスに分かれて順位を競っているスポーツである。

 

    午前中の実技講習では、まず使用する用具の解説をしてもらった後、参加者全員で試技を行った。その実技過程では、使用するコートやルールについてもその都度説明をしてもらったので、「ボッチャ」というスポーツのことがよく分かる講習になった。その後、参加者が4つのチームに分かれ、実際にゲーム形式を取り入れた講習を行った。その中では、ゲームの流れや得点の数え方、勝敗の決し方等も教えてもらい、体験的な理解を深めることができた。さらに、ランプという「ボールを投げることができない選手が使用する勾配具」の使用例を基に、何人かの参加者が実際に使用する場も設定してくださった。約2時間の実技講習があっという間に終わったことを覚えている。

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 午後からは、曽根先生がプレゼンを活用した講演を約1時間してくださった。その内容の概要は、「ボッチャ」の面白さやクラス分け・ボッチャ協会の2つの方向性・いろいろな投球方法等の実例・総合型クラブの意味と特徴・障がい者スポーツの環境やアダプテットスポーツの意味や考え方、実施上のポイント・インクルーシブな活動の形態等であった。私が講演を聴いて一番心に残ったことは、“パラリンピックの父”とも言われるグットマン博士の「失われたものを数えるな、残っているものを最大限活かせ!」という言葉。障がい者のスポーツは、「できない」ことより「できる」ことに着目すべきなのである。私はスポーツや運動の指導はもちろんたが、教育全般にわたってこの考え方を基本にすべきではないかと強く思った。そうすれば、能力的に劣っていたり苦手意識をもっていたりする者、つまり学習における弱者に対する適切な指導・支援を保障することができるのではないかと考えた。

 

    また、講演後の研究協議の中で特に心に残ったことは、総合型クラブのスポーツ教室において障がい児に対してどのような配慮が必要かという問いに対して曽根先生が答えた「障がい児の健康や安全上の留意事項を他の子に伝えることは必要だが、障がい名や詳しい症状を伝える必要はない。ダウン症のA君ではなく、A君がたまたまダウン症なのだという考え方で配慮することが大切だ。」という言葉。曽根先生が自身で運営している「わくわくAdapt sportクラブ」の基本方針がそのような考え方なのだと知り、私は強く共感したことを覚えている。