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小学校体育科で扱うアダプテットスポーツの特性について考える

    今月1日(金)と2日(土)の両日に地元の国立大学教育学部附属小学校で、本年度の教育研究大会が開催された。私はその二日目に公開された6年生の体育科授業「シッティングバレーボール!―共生・共汗・共働―」を参観するとともに、その後の分科会にも参加した。

 

 私が参観した授業は、教科横断的な単元テーマ「『TOKYO 2020』を楽しもう!」に含まれる体育科の単元「アタック!バウンドキャッチバレーボール」(全8時間扱い)の第5時に位置付けられていた。単元展開においては特に「意図的な連係による攻撃」に主軸を置いていたが、本時はアダプテットスポーツ「シッティングバレーボール」(お尻が地面から浮かないように座った状態で行うバレーボール)を取り入れ、「ポジショニングを考えた守備」にも課題意識をもたせるとともに、「東京オリンピックパラリンピック競技大会」を多様な視点で楽しむことができるようなきっかけをつくることを意図していた。

 

 そこで今回は、その授業展開の概要と参観所感をまとめる中で、小学校体育科で扱うアダプテットスポーツ(運動実践者の障がいの種類や程度に合わせてルールや用具を工夫して行うスポーツ=障がい者スポーツ、パラスポーツ)の特性について考えてみたい。

 

 まず、準備運動として反応ゲームを取り入れていた。内容は、座った状態で追いかけっこや鬼ごっこを行う運動であった。児童たちは身体を腕で支持しながら移動する動きを活発に行っていた。ただ、場所が附属中学校体育館で当日、結構冷え込んでいたので、けがの防止のために手首や腕、肩等のストレッチを事前にもう少し入念にしておくとよいと思った。

 

 次に、本時「シッティングバレーボール」を取り入れるのは守備の仕方について考えるためであることを説明し、「どのように守れば守りやすいか考えてやってみよう」というめあてを確認して、狭いコートでのゲームを行なわせた。児童たちはラリーが結構続くゲームを展開することができていたが、特に守備に対する課題意識が醸成しているようには見えなかった。

 

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 そこで、教師はコートを広くしてゲームを行おうと働き掛け、引き続きゲームを行わせた。すると、得点が入りやすいゲーム展開に変化した。これは、コートが広くなったために守りのスペースが広くなり、スパイクが決まりやすくなったからである。児童たちは守備の仕方を工夫する必要性に迫られていったようだ。

 

 教師はもう一度、集団化の場を設定し、コートを広くしたことにより何が変わったかを問うた。児童からは「守りのスペースが広くなったから、守備の仕方を変えた。」という主旨の発言が出され、「守備の仕方を工夫しよう」という課題意識を全員が共有化することができていた。その後に再開したゲームの様相は、チームごとに男女が協力しながら守備のポジション取りを工夫したゲームが展開されていた。

 

 最後に、本時の活動を振り返らせる中で特に各チームの守備の仕方の工夫について発表させて、次時からの「アタック!バウンドキャッチバレーボール」のゲームにも生かしていこうと締めくくった。

 

 私は授業を参観しながら、本時アダプテットスポーツ「シッティングバレーボール」を取り入れたことは成功していると評価した。それは、座って行うという「シッティングバレーボール」の特性上、身体を移動するのに腕を使うために移動スピードが足による移動よりは遅くなり、バレーボールが苦手な児童にとっても行いやすいからである。また、コートの広さを変えた働き掛けも効果的だった。それらの指導の工夫によって、守りのポジション取りを意識した「守備の仕方を工夫しよう」という課題意識を醸成し、全員で共有化するのに有効な場になっていたと思う。

 

 このように小学校体育科で扱うアダプテットスポーツの特性を生かせば、運動やスポーツの苦手な児童も含め全員が楽しく取り組むことができ、体育学習における教師のねらいを実現するのに有効な児童の課題意識を醸成・強化することができるのである。小学校だけではなく、あらゆる校種の教師は、保健体育科教育の充実を図るためにもっと様々なアダプテットスポーツ(障がい者スポーツ、パラスポーツ)の特性について研究を深め、積極的に日々の授業に導入すべきではないだろうか。