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どうなる?「総合型地域スポーツクラブ」の登録・認証制度の行方…

    前回の記事において、人生100年時代におけるスポーツの役割を考える中で、「スポーツを中心としたコミュニティの構築」の大切さを述べた。その際に触れることができなかったが、その役割を我が国の各地域で担っている団体の一つが以前紹介したことがある「総合型地域スポーツクラブ」(以下、「総合型クラブ」)である。本県で実際に定期的に活動しているのは、昨年度末では41クラブあったが現在では32クラブに減少している。その主な理由は、各地域において少子高齢化の波が押し寄せて会員が激減したり、運営スタッフが高齢化している上に後継者が見つからなかったりして、各種のスポーツ教室の継続を始めとするクラブ運営全般が円滑にできなくなってきたからである。因みに、「総合型クラブ」は現在のところ全国で約3,600クラブ設立しており、一番多いのが兵庫県の781クラブ、次が愛知県の142クラブ、3番目が東京都の137クラブとなっている。反対に一番少ないのが鳥取県の22クラブ、次が佐賀県福井県の27クラブとなっている。本県は全国的に見て少ない方の県である。

 

 そのような状況下、平成29年3月にスポーツ庁が策定した「第2期スポーツ基本計画」の具体的施策の中で「総合型クラブ」の質的充実が謳われ、そのために「総合型クラブ」の登録・認証制度を新たに構築することになった。そして、スポーツ庁は「スポーツ活動支援事業(総合型地域スポーツクラブの質的充実に向けた支援推進事業)」を公益財団法人・日本スポーツ協会へ委託した。現在、日本スポーツ協会は「総合型クラブ」の登録・認証制度の整備に向けてプロジェクトを発足させ、「総合型地域スポーツクラブ全国協議会(SC全国ネットワーク)」と連携しながらその具体案を策定しているところである。

 

 ところで、私は2月25日(月)に東京都で開催された「SC全国ネットワーク総会」にオブザーバーとして参加する機会を得て、今のところの「総合型クラブ」の登録・認証制度(案)概要を知ることができた。そこで、今回はその概要を簡単にまとめながら、私なりの所感を付け加えてみたい。

 

 まず、この制度の目的は「総合型クラブ」の質的充実を図ることである。そして、本制度を創設・運用することで「総合型クラブ」と行政機関との連携が深まることを期待しているのである。しかし、この期待に関して私はやや疑問をもっている。その理由は、現在までのプロジェクト推進過程において、国及び地方公共団体等の行政機関との連携が十分に図れているとは言い難い状況なのに、登録・認証制度を創設・運用し始めたら急にそれらとの連携が深まることは難しいのではないかと思うからである。今後、この点を考慮しながらプロジェクトを推進してほしいものである。

 

 次に、この制度は基本的に「登録」(「総合型クラブ」からの申請に基づき、制度の運営主体が「登録基準」に合致したと判断した場合に「総合型クラブ」としての名簿に記載する手続き)と、「認証」(当該クラブが登録手続きを完了した後に、制度の運営主体があらかじめタイプ別に用意した「認定基準」のいずれかのタイプに当該クラブをあてはめ、タイプに応じた認定証を当該クラブに対し発行する手続き)の2段階で構想しているとのこと。ただし、「登録基準」はある県で検討している例を示しただけであり、「認定基準」についてはまだ示す状況にないとのことであった。つまり、この制度の根幹の部分はまだ定まっていないのである。私はこの「登録基準」の設定に関して、「総合型クラブ」の質的充実という目的に適うためには「多世代・多種目・多志向」の確保という視点は外せないと思うが、その他の条件はあまり厳しくしない方がよいと考える。その理由は、全国約3,600クラブの中には今まで地域の有志が細々とクラブ運営を行ってきて、地域住民の生涯スポーツの機会を保障することに貢献しているクラブも多いので、それらのクラブが登録できないような事態に陥らないようにしてほしいからである。特に人口減少社会と言われ、過疎化を余儀なくされている地域においては、地元に数少ない「総合型クラブ」の活動の灯が消えないように配慮してほしいと願っている。

 

 さらに、この制度の運営体制図や組織等の概要説明があった。基本的には、中間支援組織は都道府県体育・スポーツ協会(県体協)が担い、その中に「総合型クラブ登録審査委員会(仮称)」の事務局を設置するという案であった。この点に関しては、現在は本県において中間支援組織として機能しているのは、私の勤務している公益財団法人の中に設置している「広域スポーツセンター」であるので、本県の県体協にその機能を移譲するというのは困難ではないかと考えている。各都道府県の実情を十分配慮した柔軟な対応を期待したい。

 

 その他、登録申請から登録認定までのフローチャート(案)やこの制度の創設・運用に向けたスケジュール(案)も示されたが、参加者の多くはそこまで問題意識が至っていない雰囲気であった。この制度の策定予定は来年度末(来年3月まで)であり、運用実施予定は再来年度(来年4月から)である。私はこの制度の創設・運用まで漕ぎ着けるには、まだ数多くの課題を解決しなければならないのではないかと考えているので、「間に合うのだろうか?」という疑問と不安が頭の中を覆ってきたのが正直なところであった。

 

 以上、今のところの「総合型クラブ」の登録・認証制度(案)概要の内容と私なりの所感を述べた。所感の内容がやや否定的なものになったが、私としてはこの制度の創設・運用が全国の、そして本県の「総合型クラブ」にとってその存在意義や認知度を高め、持続可能な運営組織になるきっかけになってほしいと思っている。全ての国民の生涯スポーツの機会が保障されるハード及びソフト環境が整備されることを心より念願しつつ、今回はそろそろ筆を擱きたい。