ようこそ!「もしもし雑学通信社」へ

「人生・生き方」「教育・子育て」「健康・スポーツ」などについて考え、雑学的な知識を参考にしながらエッセイ風に綴るblogです。

健康づくりに関わる全ての大人に求められることとは…

    30年前ぐらいから子どもの「体力・運動能力の低下傾向」が続いていたが、最近はその傾向に歯止めがかかり向上傾向に転じている。しかし、スポーツの基礎となる走・跳・投に係わるテスト項目や握力は依然低い水準とどまっている。特に小学生は跳・投等の「全身を全力でタイミングよく操作する能力」、中学生以上では「粘り強く全身の運動を持続する能力」の回復が遅れているのが現状である。

 

    これらの現状の背景には、学校や家庭・地域等において子どもが外遊びや運動・スポーツを行う機会が依然として少ない実態がある。少し古い資料になるが、文科省刊『体力・運動能力調査報告書』(2014年)によると、学校体育においても発達段階に応じた運動指導ができる指導者が少なく、楽しく運動できるような指導の工夫が不十分であること。また、「体力・運動能力の二極化」が進んでいることも問題点として指摘されている。これらのことから、ともすると運動していない子どもばかりが問題視されがちだが、よく運動している子どもの中にも「特定のスポーツしかできない」、あるいは「やり過ぎによって体や心に歪みが生じてしまう」という問題点が浮び上がっている。何事も中庸が大切なのだが…。この点、前回の記事でも取り上げた「総合型地域スポーツクラブ」において、運動やスポーツを楽しむことを志向する教室を開催することができればいいのではないか。

 

f:id:moshimoshix:20190318080428j:plain

 

 ところで、子どもの体力・運動能力の低下は、それ自体に問題があるというよりも、中高年齢時に重大な疾患として発症する生活習慣病の予備軍となる原因になることから、その背景にある生活習慣の誤りを問題視していると考えるべきであろう。具体的には、体力・運動能力の低い子どものライフスタイルは、「運動をしていない・夜更かしをする・朝起きられない・朝ごはんを食べない」などの生活習慣の誤りが負の連鎖に陥りがちであることが指摘されている。つまり、体力テストの成績が子どもたちの健全な発育発達を反映する大きな指標の一つであるととらえれば、それが全国的に低下しているという事実は、子どもだけでなく大人も含めた国民全体の生涯にわたっての健康づくりに警鐘を鳴らしているといってもよいのである。言い換えれば、子どもの体力・運動能力の低下問題は、日本国民にとって社会的な健康問題なのである。

 

 したがって、平成29年3月にスポーツ庁が公表した『第2期スポーツ基本計画』の中で具体的な施策目標として「学校における体育活動を通じ,生涯にわたって豊かなスポーツライフを実現する資質・能力を育てるとともに,放課後や地域における子供のスポーツ機会を充実する。その結果として,自主的にスポーツをする時間を持ちたいと思う中学生を80%(平成28年度現在58.7%→80%)にすること,スポーツが「嫌い」・「やや嫌い」である中学生を半減(平成28年度現在 16.4%→8%)すること,子どもの体力水準 を昭和60年頃の水準まで引き上げることを目指す。」が設定されたことは、大きな意義があると思う。今後この目標を実現するために、スポーツ庁を中心に幼児期からの子どもの体力向上策の推進、学校の体育に関する活動の充実、子どもを取り巻く社会のスポーツ環境の充実等に向けて様々な事業が一層展開されていくことを大いに期待したい。

 

 そこで、学校・家庭・地域等において健康づくりに関わる全ての大人は、子ども自らが運動・スポーツを行うことができるように、特に幼児期や小学生年代での運動遊びや運動・スポーツの時間・空間・仲間という「三間」を取り戻すための「仕掛け」や「仕組み」づくりにこれまで以上に取り組むことが求められている。そのためには、私たち大人が運動・スポーツのもつ意味や価値、特に運動・スポーツの楽しさや喜びを味わうという欲求充足機能について再認識する必要があるのではないだろうか。