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健康を守るための「腸内環境」の整え方とは…~辧野義己著『大便通』から学ぶ~

 「えっ、これって血便じゃないの!?」

 夜中、自宅のトイレの中で私は初めての下血を経験して、つい不安な気持ちを抑えきれず、つぶやいてしまった。

 

 今から約5年前、教職最後の年度が始まった矢先、本県の教育研究団体の会長に選任されて1週間ほど経った5月中旬だった。前夜、その教育研究団体の事務局の方々が歓迎会を催してくれ、私は勧められるまま盃を重ねてしまい、千鳥足になりながら帰路に着いた。帰宅後、簡単に入浴を済ませ、布団に直行した。あっという間に入眠したものの、夜中にチクチクとした腹痛が襲ってきたので目が覚めた。私はすぐにトイレに向かい、便座に腰を下ろして用を足していたが、その最中にも腹痛が続いていた。そして、便座から腰を上げて、振り向いて覗き込んだ時に、思わず発したのが最初の言葉である。

 

 翌日は土曜日で近くの内科が休診だったので、当日の救急病院であった市民病院へ行き、若い女医さんに診察してもらった。診断結果は、「虚血性大腸炎」。血管の障害によって、腸管の血のめぐりが悪くなることで起きる病気。症状は、腹痛や下血など。重症になると腸管が壊死を起こすこともあり、その場合は早急に手術をする必要がある。幸い私の場合、軽症のようなので取りあえず入院して、点滴で栄養分を摂取しながら治療するとのこと。それから約1週間、私にとっては人生初の入院生活だった。入院期間は慌ただしかった。1週間に県内の3つの教育関係団体の定期総会に来賓として招待されており、そのうち2つは祝辞を依頼されていた。出席の度に外出許可申請書をナースステーションへ提出し、病院着からスーツに着替え、ベッドの上で校正した祝辞原稿を内ポケットに入れて会場へ出掛けた。他の来賓の方から「顔色が悪いが、大丈夫か。」とか「汗が多いが、体調がよくないのか。」とか、心配の声を掛けていただいたが、「大丈夫です!」と見栄を張りつつ何とか大任を果たすことができた。綱渡りのような日の連続で、今思えば、よく乗り切ったなあと思う。

 

 私は小さい頃から便秘気味の体質だった。「虚血性大腸炎」を発症する前も、確か1週間近く便秘の状態だった。それまでも便秘を解消するために、下腹部をマッサージしたり、食物繊維の多い食事を心掛けたりしていた。しかし、その当時は公務上の様々な仕事をこなすためにデスクワークの時間が長く、運動不足も重なって結構ストレスが溜まっていた。その上にもうすぐ還暦を迎える年齢。身体に迫ってくる老化現象を徐々に自覚していた。おそらくこのような心身の状態がいつも以上に便秘の症状を悪化させ、「虚血性大腸炎」を誘発したのではないかと思う。

 

 そこで、私は便秘を解消する方法についてしっかり勉強しようと、近くの書店で適切な本を探した。その際に見つけたのが、辧野義己氏が著した『大便通~知っているようで知らない大腸・便・腸内細菌~』であった。本書を読みながら、普段テレビの健康番組で聞いたことがあった「腸内環境」に関する知識を再認識しながら、その学問的な裏付けも知ることができ、学ぶべきことがたくさんあった。今回は、その中で特に健康を守るための「腸内環境」の整え方について、私なりにまとめてみたいと思う。

 

 自らの健康状態を知らせる体からの「便り」である大便は、一般的には80%が水分で、それ以外の20%は固形成分である。その固形成分の内訳は、食べカス、腸粘膜、腸内細菌が3分の1ずつを占めている。その腸内細菌は、「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」に分類され、それぞれが機能し合って腸内の環境に大きな影響を及ぼし、それが健康を左右するのである。特に大腸を発生源とする病気、例えば「大腸がん」や「潰瘍性大腸炎」、「虚血性大腸炎」などを防ぐには、「日和見菌」が「悪玉菌」と連立政権をつくるのを食い止め、腐敗を起こしにくい環境に腸内を整える必要がある。そのためには、腸内で「善玉菌」が優勢になり、発酵を起こすような環境に仕向けなければいけないのである。

 

 マスメディアによる健康番組の影響で今では常識的になっているように、「善玉菌」を増やすのに有効なのはヨーグルト。乳酸菌やビフィズス菌をそのまま摂取できるので、効率よく「腸内環境」を改善できるのである。また、その乳酸菌やビフィズス菌のエサとなり、大便が腸内に滞在する時間を最適にする働きもある食物繊維の多い食べ物を摂取することも大切である。食物繊維の多い食べ物と言えば、サツマイモや山芋などのイモ類、大豆や枝豆などの豆類、玄米やひえなどの穀類、カボチャやゴボウなどの野菜、椎茸やしめじなどのキノコ類、ひじきやメカブなどの海藻類、干し椎茸やきくらげなどの乾物、アーモンドや落花生などのナッツ類、リンゴやバナナなどの果物を挙げることができる。また、漬け物や納豆などの発酵食品も「善玉菌」を増やすのに役立つ食べ物である。「虚血性大腸炎」を発症して以来、私は妻とも相談して上述したような食べ物をなるべく摂取するように、食生活をさらに改善した。しかし、それ以後もやや便秘気味な状態が続いていたので、食生活の改善とともに大便を押し出す腹筋や腸腰筋という筋力が衰えないように、日常的にウォーキングやストレッチなどの軽い運動や週末にはテニスを実践している。そのお陰で何とか今は、少しずつ便秘の症状が改善している。

 

 今回の記事は、私が「虚血性大腸炎」を発症したことを契機にして、辧野義己著『大便通』を読み、そこから学んだことを実践したことで少しは「大便・通」になり、健康的な「大・便通」になりつつあるという内容。便秘症の皆さんに多少でも参考になれば幸いである。