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東京都の地域スポーツクラブに関する調査研究報告書(平成30年度)の内容について

 「東京都の地域スポーツクラブに関する調査研究報告書(平成30年度)」は、東京都の地域スポーツクラブ(以下、クラブ)の実態や地域住民の意識を把握し、クラブの課題解決や会員拡大に向けた基礎資料を作成することを目的に、国立大学法人筑波大学体育系 体育・スポーツ経営学研究室が実施したものである。昨年度の同報告書に引き続き、本年度も本県の「広域スポーツセンター」事業を担っている当事業団宛てに送付されてきた。

 

 そこで今回は、本県の総合型地域スポーツクラブ(以下、総合型クラブ)の抱える課題を鑑み、本報告書の中の特に「クラブの衰退に関する調査研究」の内容概要と私なりの所感をまとめてみたい。

 

 まず、「クラブの衰退要因の調査結果」について。この項目に関する調査は、都内のクラブアドバイザー3名に対するインタビュー調査を行い、クラブアドバイザーが考えるクラブの衰退に影響を及ぼす要因を抽出している。その結果、3名の共通点として、次の7つの項目が挙げられている。

① 新たな事業に取り組む刷新性の低さ

② 幅広い対象に事業展開を行う多様性の欠如

③ 会員間の交流を促す交流性の欠如

④ 会員の参画意識の低さ

⑤ 運営を担っているという当事者意識の低さ

⑥ 他に依存せず自ら計画を立てる自立性の欠如

⑦ 組織間のネットワークの限定性

 

 そして、これら7つの要因を克服するためには、次のような対応策が求められている。

① クラブに対する地域住民や会員のニーズを把握し、それらをクラブに取り入れる手立てを検討するとともに、クラブへの活動に反映させ、活動を刷新していく。

② 子どもから高齢者まで、どの年齢層にも参加しやすいような時間帯を設定するといった多種多様な事業を展開していく。

③ 普段の活動に加え、交流イベントなどを開催することによって、会員間の仲間意識を醸成し、クラブの魅力を高める。

④ クラブの基本理念である住民主体の運営という点を会員に十分説明する。(⑤と⑥の対応策と重複)

⑦ 学校や行政など様々な組織と良好な関係性を構築する。

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 次に、「クラブの衰退メカニズム」について。インタビューでは衰退クラブの特徴として、行政主導であることが挙げられている。行政主導のクラブは運営組織の自立性が失われ、会員のクラブ運営への参画意識・当事者意識が低下してしまう。また、行政以外の組織とのネットワークの構築が行われないことも関係し、新規事業の開拓が行われないなど刷新性が低くなる。その結果、クラブの活動の多様性や交流性が乏しくなり、最終的に活動のマンネリ化や魅力の低下を招き、会員・財務資源・スタッフや指導者・事業数の減少というクラブの衰退に陥るのである。このような一連の衰退プロセスを、どこかで断ち切らなければ復活することは難しい。これらの情況は、本県の多くの総合型クラブにも見られるのではないだろうか。

 

 今後、本県の総合型クラブを行政主導型か住民主導型かで分類整理するとともに、それぞれが抱える課題別のグループを編成し協同して課題解決していくような態勢づくりを工夫する必要がある。そのことが、総合型クラブが存在する各地域住民にとって、生涯スポーツの機会をより保障するとともに、スポーツを媒介とした新たな地域コミュニティーを活性化することにつながるのである。本県の「広域スポーツセンター」として鋭意取り組んでいく所存である。