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小中学校教員を対象に「教育論文の書き方」の講話と演習を行いました!

   今月13日(土)の午前中、市内の小中学校教員42名を対象にして、本市教育研修センターにおいて「教育論文の書き方」の講話と演習を行った。これは、本年度の本市教育創造セミナーの第3回目として、私の大学同期生が行った「教育関係法令等」に関する講話とともに実施したものであり、本県の管理職任用候補者選考審査を受験する者向けの講座となっている。

 

 「論文審査」は、ほとんどの都道府県における管理職選考試験で採用されていると思う。この審査対象になる論文を「教育論文」と呼び、いわゆる研究主題を設定して研究仮説や研究内容及び方法等を明確にして取り組んだ教育実践を対象にする「教育研究論文」とは区別している。「教育論文」で大切なことは、自分の学校経営及び運営等に関する能力・識見等を表現するために、限られた時間で出題された課題に応えるべく的確かつ簡潔に内容をまとめることである。

 

 そこで今回は、管理職選考試験にチャレンジしようと思っている先生方はもちろん教職に関心をもっている方の参考に資するために、標記の講話と演習の内容を簡潔にまとめておきたい。

 

 まず、講話の導入として「書く」というアウトプットの大切さについて強調した。文章にすることは、自分の思いや考えを整理し明確にすることができ、自己のアイデンティティーを保った言動を取ることに役立つ。そのことは、日頃から言行一致を心掛けることになり、結果として豊かな人間性を培い、周囲からの厚い信頼を得ることにつながるのである。また、実務的な面からとらえても、管理職になれば保護者や所属教職員・行政関係者等に向けて文書で伝達したり報告したりする機会が多いので、課題に対する的確な文章表現力が求められる。「教育論文」の書き方について研修することは、単に管理職選考試験に合格するためだけではなく、上述のような人間形成的・実務的な意義もあることを認識してほしい。

 

 また、管理職を目指す動機についても触れた。公教育の使命を果たすために自分の理想とする教育や学校づくりを具現化したい。自分の勤務する学校の子どもたちの生存権・学習権等、教職員の生存権・労働権等を守り、地域社会の社会的・文化的風土を高めたい。一人一人の教員には個々の動機があるであろう。また、教育者としての自分の存在価値が社会的に承認されることで自己実現を図りたいという、俗的に言えば「立身・出世」をしたいという動機もあるであろう。私は、後者の動機も決して否定はしないが、「出世」とは本来「世間から脱する」という仏教用語であることから、管理職になったら“自己保身を最優先するような世間的な価値観”から脱した崇高な価値観や人生観をもってほしいものである。その際に、当ブログの最近の記事でも取り上げた福田ますみ著の『でっちあげ―福岡「殺人教師」事件の真相―』と『モンスターマザー―長野・丸子実業「いじめ自殺事件」教師たちの闘い―』の二冊の本を紹介し、それぞれの事件に関係していた二人の校長の対応内容及び在り方を対比しながら話した。

 

 さらに、本県の管理職任用候補者選考審査区分の内容及び配点等についても説明した。審査区分には「筆記審査」「論文審査」「面接審査」があり、「論文審査」は第一次では50点、第2次では150点の配点がある。それぞれの時間は60分~70分間程度になる。ただし、第1次は「筆記審査」の半分と「論文審査」を合わせて90分間、残り半分の「筆記審査」で90分間という日程になる。そのために、第1次は「筆記審査」の出来不出来による心理的な動揺をいかにセルフコントロールして、出題の意図に即した論文を冷静に書くかがポイントになるのである。私はその時その場における情況を客観的に把握しつつ、「教育論文」を書くことの大切さを説いた。

 

 次に、過年度の論文出題問題の分類表に基づいてその傾向を指摘した上で、「教育論文」の基本形や具体的な論述のポイントについて、概ね次のような点を指導した。

〈全般に関する事項〉

○ 本県のような「課題指定論文」の場合は、一般的に「序論・本論・結論」の三段構成がよいこと。

○ 課題を把握したら、何をどのように書くか、全体としてどのような論の展開にするかに思いを巡らし、その下書きとしてレジュメを書くこと。

○ 「題意」を正確に読み取り、余分な部分にこだわり過ぎないようにして論文の焦点をはずさないこと。

〈序論に関する事項〉

○ 出題の背景や重要性を整理して、現任校の実態をしっかりと分析した上で、〈本論〉の取組内容の方向性を示すこと。

〈本論に関する事項〉

○ 課題解決のための方策として2~3本の柱を立てて、端的に取組内容を表すと同時に採点者の目を引き、思わず読みたくなるような表題を考えること。

○ 柱の表題の語尾を、用言止めか体言止めかのどちらかにそろえること。

○ 具体的な取組内容は、管理職としての取り組みでなければならないこと。例えば、教頭任用候補者の立場であれば「校長の補佐能力」「組織マネジメント能力」「職員の育成能力」等の視点を入れ込むこと。

○ 「学校と家庭・地域社会・教育関係諸機関等との連携」の視点を入れ込むとよいこと。

〈結論に関する事項〉

○ 論文の最後は、管理職になろうとする意欲や抱負を伝えるための言葉でまとめるとよいこと。「~と思う。」「~したい。」などのようなエッセイ風の文末ではなく、「~する覚悟である。」「~する所存である。」という多少紋切り型ではあるが力強い文末にするとよいこと。

 

 以上のような講義を行った後、約15分間取って、演習として最近の話題である「教員の働き方改革」に関連した次のような論文題に対するレジュメ(論文構成)を作成してもらった。

「2018年9月に公表された教員勤務実態調査の結果では、年齢が若い教諭ほど、勤務時間が長時間化している傾向が明らかになりました。このような状況を踏まえ、経験の少ない若手教員を学校組織全体の中で支え、育てていくために、あなたは校長(教頭)として、どのように取り組みますか。現任校の状況も踏まえながら、具体的に述べなさい。」

 

 参加された先生方は、真剣な表情でレジュメ作成に取り組んでくれた。中には、15分間にレジュメ作成だけでなく実際に論文を書き始める方がいた。しかし、初めて「教育論文」を書く演習をしたのか、なかなか筆が進まない方もいた。また、レジュメ作成の手順について結論からメモ書きをする方もおり、私は後で皆によい方法の一つだと紹介するとともに、〈本論〉の柱として「チーム学校」「教員組織の連携」等のキーワードを示唆して短い時間の演習を終了した。

 

 最後に、全体の結びとして「教員の働き方改革」の視点から時間外勤務に関する「給特法」の規定内容に触れたり、「ワーク・ライフ・バランス」と「ワーク・アズ・ライフ」の考え方の違いを踏まえた「AI時代における教員の働き方改革」の展望について私なりの考えを披露したりした。そして、今回実施した「教育論文の書き方」の講話と演習が、受講した先生方から「本当に役立つ研修になった!」と言っていただけることを願いつつ、「本年度、管理職選考試験を受験する先生方の健闘を心からお祈りしています。」という言葉で締めくくった。