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久し振りに「生活科」学会の実践発表検討会に参加させてもらいました!

 「現在の生活科の実践的課題は、“深い学び”と“気付きの質の高まり”がキーコンセプトなのかな。」というのが、会員の先生方の協議を聴いていた私の抱いた感想であった。私が現職中には当検討会に参加し協議する中で、「生活科」はもちろん他教科等における教育実践研究の在り方に関する様々な知的刺激を受けていた。現役を退いて丸4年を経て、今月20日(土)の午後、懐かしい地元国立大学教育学部の演習室において行われた当検討会へ本当に久し振りに出席し、協議にも加えさせてもらった。今回、当検討会に参加するに至った経緯は、本県教育研究協議会の生活科委員長である市内のある小学校長を私が所用で訪問した際に、突然のお誘いがあったことがきっかけである。ちょうど当日が私の休日に当たっていたので、懐かしさのあまりついお誘いに乗ってしまったという次第である。

 

 そこで今回の記事は、久し振りに参加した当検討会の様子について要点を絞って報告するとともに、私の発言内容についてまとめておきたい。

 

 本県「生活科」学会の夏季研修会において実践発表する予定の二人の先生方が発表された。初めは女性教諭が「主体的に学び、自分の思いを表現する力を育てる指導の工夫―生活科「あきとなかよし」の学習を通して―」というテーマの下で実践研究したものであった。プレゼンを活用し、実践内容がよく分かる画像や映像も取り入れたものであったので、研究への取組が大変よく分かる発表だった。また、次のような研究内容及び方法もよく整理されたものであった。

(1) 単元構成や学習環境設定の工夫

  ア 児童の思いや願いを生かした単元構想

  イ 児童の意欲が高まる環境設定

(2) 気付きの質を高める支援の工夫

  ア 気付きを促す教師の働きかけ

  イ 伝え合い交流する場の設定

(3) 指導に生かす評価の在り方

  ア 見取りの視点の明確化

 

 ただし、発表後の協議における参加者からの発言は、発表者への労いの気持ちが溢れた柔らかい言葉ではあったが、指摘内容は鋭いものが多かった。私は久し振りに真摯な態度で実践研究内容を検討・審議する会の雰囲気に、何とも言えない心地よさを感じた。指摘された内容を整理すると、概ね次のようなものであった。

○ タブレットを活用したよさと問題点は、まとめの成果と課題に集約するとよい。

○ 「生活への関心・意欲・態度」に関する見取りの視点に中にある「はっきりとした声で」という表現は、「生活科」としては適切ではないので、改善するとよい。

○ “深い学び”と“気付きの質の高まり”の視点をより明確にするために、「全体の場で共有」する場面の資料をもっと増やすとよい。その際に“深い学び”=“気付きの質の高まり”という考えの下、特に“気付きの質の高まり”を具体的な実践場面でどのようにとらえたかを明確にするとよい。

 

 私はこれらの協議を聴いた上で、次のような発言をさせてもらった。

○ “深い学び”=“気付きの質の高まり”とは、子どもの“変容”した様態ととらえるとよい。その際に、“変容”を対象認識や自己及び他者認識に係わる“経験や認識の再構造化”ととらえるとよい。つまり、“深い学び”=“気付きの質の高まり”を、自他の認識した内容が意味付けられたり価値付けられたり、自己内において点として認識されていた内容が線や面として関連付けられたりすることとらえること。また、その評価法に関しては量的な研究アプローチよりも質的な研究アプローチに比重を置くことが大切である。ただし、その評価対象は幼年期の心身及び自他の未分化性を踏まえてとらえることが肝要である。

 

 次に、二人目は男性教諭が「主体的・対話的な学びを通して気付きの質を高める生活科学習―第2学年「うごく うごく わたしのおもちゃ」の学習を通して―」というテーマの下で実践研究したものであった。残念ながらパソコンが不具合のため、プレゼンを活用することはできなかったが、プレゼンの画面と発表原稿を印刷したプリントが配布されたので何とかそれで発表内容を把握することができた。研究内容及び方法、研究の実践の視点等は、次のとおりである。

(1) 単元を通して意欲を継続させる工夫

  ① おもちゃを作ってみたい思いが生まれる導入

   ア おもちゃ作りへの意欲を高める導入

   イ 学校司書との連携

  ② ふりかえりカードを生かした次時の活動

   ア ふりかえりカードによる見取りからの支援

   イ 掲示物を活用した気付きの共有

(2) 交流の場の工夫

  ① 遊びの中で生まれる自然な交流の保障

  ② 課題に応じた意図的な交流の場の設定

   ア 教師へのインタビュー

   イ リハーサルを通して他クラスとの対話

 

 協議において参加者から指摘された内容を整理すると、概ね次のような内容であった。

○ 「仮説(2)」の「交流の場を工夫すれば、より深い学びに繋がり、気付きの質が高まるだろう。」は、「交流の場を工夫すれば、気付きの質が高まり、より深い学びに繋がるであろう。」という表現にした方がよい。

○ 「成果と課題」において「情意面」と「知識面」という用語を使っているが、「生活科」研究においては共に「気付き」としてまとめた方がよい。また、「単元全体を通しての振り返り」として提示されている円グラフは必要ない。

○ 「課題」として書かれている「児童の活動の多様性を予測しておく。」は、「児童多様な活動を予測した見取りの視点に改善する。」という表現にした方がよい。また、「気付きを全体で共有する場を多く設定し、全体の気付きの質を上げる工夫」は、「気付きを全体で共有する場における教師のコーディネート力を高め、…」とした方がよい。

 

 私はこれらの協議を聴いた上で、次のような発言をさせてもらった。

○ 主題設定の理由の根拠にもなっている「児童の実態」の内容からすれば、“深い学び”=“気付きの質の高まり”=“変容”の内容の中に、もう少し自己及び他者認識の再構造化の視点が加えられてもよい。というのは、「交流」とか「全体で気付きを共有する場」とかという“集団化過程”においては、対象認識に係わる“文化化機能”と自己及び他者認識に係わる“社会化機能”が働いているので、両方の視点からとらえることが大切である。特に学級担任の思いや願いの中には、“社会化機能”の視点の比重は大きいと思われるので、ぜひその実践内容を加えてほしい。ただし、学習過程に位置付ける“集団化過程”は、単に授業の目標達成のための手段化に陥らず、あくまで子どもたちの内的な必然性を踏まえて設定することを原則とすべきである。

 

 以上、当検討会の様子について要点を絞って報告するとともに、私の発言内容についてまとめてみた。読者には、実践発表の内容が分かりづらい報告になってしまったと反省しているが、私としては協議の内容について知ってもらいたいという願いが強かったのでこの点はご容赦願いたい。また、私の発言内容はあくまでも私なりの見解を表明したものなので、読者の皆様の厳しいご批判やご批正をお願いしたい。できれば「コメントを書く」の機能を活用してくださると大変有難い。よろしくお願いします。