ようこそ!「もしもし雑学通信社」へ

「人生・生き方」「教育・子育て」「健康・スポーツ」などについて考え、雑学的な知識を参考にしながらエッセイ風に綴るblogです。

語彙力を高めるインプットとアウトプットの技法について~斎藤孝著『語彙力こそ教養である』から学ぶ~

   先日、今の職場の仲間と雑談をしている時、珍しく哲学に関する話題になった。その中で現象学の方法について私が講釈している際、現象学の始祖である「フッサール」の名前がなかなか出てこずに口ごもってしまった。普段からフッサール現象学について少しは勉強していると自負している私としては、何とも情けなく、もどかしい思いをした。このような「物忘れ」は最近よくあり、テレビドラマに出ている俳優の名前はもちろんだが、昔の職場の仲間の顔は思い出すのに名前がすぐに浮かんでこないということもよくある。

 

    加齢に伴って「物忘れ」をする頻度は上がり、高齢になってくると認知能力そのものが低下すると言われている。私が当ブログを昨年12月から始めた理由の一つには、この認知能力の低下、特に「認知症」を予防したいという願望も込めている。しかし、実際は記事を書こうとする時には、文脈に相応しい適切な語彙が浮かんでこないことが度々ある。昔、覚えていたはずの慣用句や四字熟語等が頭から消えたかのような錯覚を起こすほど、全く思い出すことができないのである。

 

    そこで、改めて「語彙力」を培うことも「認知症」予防になるかもしれないと思い、近所の書店でいろいろと物色した結果、著者に馴染みがある『語彙力こそ教養である』(斎藤孝著)という本を購入して、ここ数日間で読んでみた。今回は、その内容の中で「語彙力を高めるインプットとアウトプットの技法について」私なりに理解したことをまとめてみようと思う。

 

 著者については、多くの方がご承知のこととは思うが、簡単に紹介しておく。齊藤氏は、東京大学法学部を卒業し、現在は明治大学文学部教授をされており、教育学・身体論・コミュニケーション論等を専門にされている方である。最近は、テレビのワイドショーでコメンティタ―などもされている。著書は多数あり、私の書棚に並んでいるものだけを列挙しても、『声に出して読みたい日本語』(草思社)『身体感覚を取り戻す』(NHKブックス)『理想の国語教科書』(文藝春秋社)『教育力』(岩波新書)『三色ボールペン情報活用術』『呼吸入門』(角川新書)等がある。

 

 本書は、語彙のインプットとアウトプットを繰り返す中で教養あふれる大人になることを目的にして執筆されたものである。本書で扱う「語彙」は、ただ単語数や言葉の量を指すものではなく、「語彙=教養」と考えて言い回しやフレーズなどの文章を含んだ知識の集合体を指すものととらえている。したがって、著者は“語彙を身につけるには、その言葉が含まれる文脈ごとのなかで覚えるほうがずっとラク”とか“豊かな日本語を声に出して読めば、それがそのまま「あなたの語彙」になっていく”など、私見を述べている。また、著者はこのような考え方を踏まえて、「語彙力を高めるインプットやアウトプットの技法について」独自のアイデアを多様に披露してくれている。ここでは、私なりの理解の範囲でまとめた内容を箇条書きにして紹介していこう。

 

 まず、次のような「語彙力を高めるインプットの技法について」のアイデアを披露している。

○ インプットの王道は、「毎日の読書」習慣である。

○ 語彙豊かなエッセイを読んで、「ものの見方」の角度もいただく。

○ 気に入った作家の文章はすべて読み尽くす。

○ ミステリーは骨休め兼トレーニングに最適である。

○ 『三国志』『論語』の中の語彙や仏教由来の言葉、ドストエフスキーシェイクスピアの翻訳作品、日本歌謡曲の歌詞等から学ぶ。

○ インターネットは現代人必須の語彙収集所、アマゾンレビューはインプットの宝庫である。

○ テレビの良質な番組、ドラマの脚本、映画の「字幕翻訳」等は、語彙を身につける教科書である。

○ 電子辞書、タブレット端末のツールを工夫して活用する。

 

 また、次のような「語彙力を高めるアウトプットの技法について」のアイデアを披露している。

○ 「定着のためのアウトプット」(練習アウトプット)として、オウム返しや素読で「インプット&アウトプット」・「アウトプットは5回」・「セレクト音読」・「登場人物や語り手になりきっての音読」「夏目漱石で日本語をマスター」「落語や漫才から笑いの語彙をコピー」等を実行する。

○ 「実戦で使うアウトプット」(本番アウトレット)として、「コミュニケーションの場という“実戦で使う”だけでなく、教訓を“実戦”すること」・「言葉で人を動かすこと」・「的確でユーモアのある比喩を使うこと」等を実行する。

 

 以上、箇条書きで整理したので、分かりにくい面もあると思う。興味をもたれた方は、本書を手にしてほしい。私としては少しハードルが高い技法もあるが、「認知症」予防のためにもできるだけチャレンジしてみようと考えている。読者の皆さんも、「語彙=教養」を身につける努力をしてみませんか!?