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高齢者自身が知っておくべき老化対策とは…~平松類著『老人の取扱説明書』から学ぶ~

 前回の記事で取り上げた『老人の美学』(筒井康隆著)と同様に、自宅近くの書店で何気に書名に興味をもって手に取った本がある。『老人の取扱説明書』(平松類著)である。最初、書名を見た時は、何だか高齢者に失礼な題名だなと思った。しかし、ペラペラとページをめくって斜め読みしてみると、高齢者自身やその家族、医療・看護や介護関係者などにとって大変有益な情報が掲載されていたので、私は早速購入してここ数日で読み通してみた。「高齢者」の仲間入りをしたばかりの私にとって、いろいろと学ぶべきことが多かった。

 

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 そこで今回は、本書で取り上げている「老人のよくある困った行動」の16例の中で高齢者自身が知っておくべき老化対策について、特に印象に残った幾つかの内容の概要とその簡単な所感を綴ってみたい。

 

 一つ目は、聴覚について。高齢者の耳は高音域が聞き取りにくいにもかかわらず、一定の音量を超えた途端に急にうるさく感じてしまうという「リクルートメント現象」が起き、難聴になるほど酷くなるそうである。その予防改善策としては、食事面でマグネシウムを摂ることが効果的らしい。マグネシウムは、あおさやひじきなどの海藻類・ココアやアーモンドなどの種子類に多く含まれ、複数を組み合わせて摂取するのがよい方法になる。また、その他の耳によい栄養素は、ビタミンCやビタミンEである。さらに、食べ過ぎは耳の加齢変化を促進してしまうので、健康法として一般化している「腹八分目の食事」も効果的であるらしい。

 

    私はまだ聴覚は大丈夫だと思っていたが、そうでもない事実が起こった。それは、職場がある都市公園内にイノシシが出没した時にその対応として高音波の器具を設置することになり、それを試しに聴いた時に若い人たちには聴こえた音が私には全く聴こえなかった。この事実は私にとってちょっとショックな出来事だったので、妻の協力を得て聴覚の老化がより進む前に食事面での配慮をしていきたいと思った。

 

 二つ目は、味覚について。加齢によって味覚も低下するらしく、55歳を超えると若い人の3倍以上味覚障害が出てくるらしい。味覚は「甘味・塩味・苦味・酸味・旨味」の5つが存在し、舌にある味蕾(みらい)という細胞で感じる。味蕾は毎日のように生え変わるのだが、年齢を重ねるとこの生え変わりが遅くなり、古い味蕾はセンサーが弱いので味を感じにくくなるらしい。また、高齢になってくると薬を多く飲みがちになり、これが味覚を落とす原因にもなる。では、どの味がどういう風に感じるであろうか。甘味は若い頃の2.7倍使わないと、同じ味に感じないという。それ以上に、苦味は7倍、酸味は4.3倍、旨味は5倍、そして塩分は何と12倍使わないと、若い頃のように感じないのだそうだ。だからこそ、高齢者は塩分の強い食事を摂りがちになる。そこで、その解決策として、一つは塩分以外の味を使うこと。次に、味にアクセントをつけること。さらに、食事をより美味しくするために、唾液を分泌させること。なお、味というのは味覚だけでなく、嗅覚や視覚も重要になるので、それらへの配慮もすること。では、そもそも加齢に伴う味覚の低下を予防する方法はないのだろうか…。ある!それは、味覚の低下を防ぐ役割がある亜鉛をしっかり摂取することである。牡蠣・カニ・牛肉・レバー・卵・チーズなどは亜鉛を多く含む食材なので、これらで1日に必要な量を確保できるらしい。

 

 私の楽しみの一つは、食事である。だから、美味しい食事を楽しむためになるべく味覚を低下させないような食事面の対応を心掛けたい。また、今ちょうど歯科を受診中なので、気になった情報を付け加えたい。それは、入れ歯の素材によって味の感じ方が変わるとのこと。自然な色を出せるレンジという素材は、口の感覚も味の感じ方も落ちるらしい。味を感じやすくするには、金属製の入れ歯に変えるのが一つの方法である。ただし、金歯と銀歯といった複数種の金属があると、口の中で「カルバニー電流」という電流が流れて、変な味や感覚が発生する場合もあるらしいので、要注意である。また、噛みあわせが悪くなっても、味覚の低下を招くことがあるので、この点でのチェックも怠らないようにしたい。

 

 三つ目は、食道や気管について。高齢になると、むせたり痰が出たりすることが多くなる。本来人間は口から入れたものは、食道を通って胃に行き、空気の場合だけ、気管を通って肺に流れるようになっている。ところが、この自動的な判別が加齢によってうまくいかなくなってくる。すると本来は空気が通るべき道である気管に、食べ物や飲み物やつばが流れ、肺に向かってしまう。そのままだと肺炎になってしまうので、むせて吐き出そうとすることになる。若い頃は咳を1、2回すれば詰まったものが排出されて、正しい方へ流れるが、年を重ねると、押し出す筋力が弱くなる。そして、詰まったものが肺のほうへ行くと、肺炎を起こして痰の原因になるのである。この誤嚥性肺炎によって死亡する場合もある。だから、高齢者が痰を出しそうになったら、周りの人は手伝ってあげるほうがいいのである。そのための対処法の一つが、とにかく背中を叩く「タッピング」という方法。もう一つが、抱え込みながら胸を押して詰まったものを出す「ハイムリック法」という方法。何もしないで、呆然と立ち尽くすのが一番よくない。また、高齢者自身が痰を出しやすくする方法もある。それは、声を出さずに勢いよく生きを吐き出す「ハッフィング」をし、3回ほど咳をするという方法。これだと、痰がスムーズに出てくるそうである。ただし、普段からむせない力を鍛えておくことが大切である。その一つは、舌を鍛える方法。「舌を上顎にしっかりと押し付けて力を入れ、3秒経ったら力を抜く」というトレーニングを10回、朝・昼・晩と行う方法。もう一つは、呼吸筋を鍛える方法。「鼻から空気を3秒吸って、口から6秒間吐く」という方法である。なお、むせないようにするには、口を乾かないようにすることも大切である。脱水症状を防ぐ方法と同様に、こまめに水分を摂ったり、飴をなめたりするとよいそうである。ただし、砂糖が多い甘い飲み物は、唾液が減って口の中が渇くドライマウスになるので、要注意。

 

 私は、たまに妻と共にカラオケボックスに出掛けて、約2時間交互に歌っているが、これも舌や呼吸筋を鍛えることになっているのではないだろうか。もちろん声帯を鍛えることが一番なのかもしれないが、よい方法だと自認している。しかし、本書から学んだ上述の方法もこれからは意図的に日常生活に取り入れていきたいと考えている。加齢に伴う老化は避けて通れないことではあるが、できるだけそのスピードを遅らせたりその症状を緩和させたりする自衛策は講じていきたいものである。そして、必要な時には周りの人々に適切な対処をしてもらって、少しでも困り感の少ない、QOLを維持した老後生活を送っていきたいと願っている。