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実践すれば寿命が10年は延びる「のど体操」とは…~西山耕一郎著『肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい』から学ぶ~

    前回の記事で、高齢になるとむせたり痰が出たりすることが増え、そのことが原因で「誤嚥性肺炎」を患って死亡する場合もあるので、普段から「むせない力」を鍛えておくことが大切になると述べた。そして、そのために必要とされる舌や呼吸筋を鍛えるトレーニング法について幾つか概説しておいた。

 

 そこで今回は、「むせない力」よりもっと根本的な「飲み込む力」をつけるトレーニング法として、最近読んだ『肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい』(西山耕一郎著)に記載されている8つの「のど体操」について紹介したい。そもそも誤嚥というトラブルは、主に「のど仏周りの筋肉の衰え」によって起きるので、これを防ぐことが大切なのである。また、「飲み込み力」をつけるためには、「嚥下」以外にも「呼吸」「発声」を加えた3つののどの機能の維持・向上が欠かせない。だから、著者は8つの「のど体操」の中から3つの機能別に1つずつ選んで、40~60代からトレーニングに取り組んでいけば、10年は寿命を延ばせるのではないかと言っている。これは決して大袈裟なことを言っている訳ではなさそうなので、老年者だけではなく壮年者の方々もぜひ参考にしてほしい。

 

 では、3つの機能別に、全部で8つの「のど体操」の要領について、できるだけ簡潔に説明していきたい。

 

【のどの筋トレ】

1 「ごっくんトレーニング」(飲み込み力をつけるための一連の基礎運動)

①「嚥下おでこ体操」…おでこに「手根部」(手のひらの下部)を当てて、おでこと手で押し合いっこをする体操。押し合っている状態を5秒間キープし、5~10回繰り返す。

②「あご持ち上げ体操」…あご先に両手の親指を当てて、押し合いっこをする体操。これも押し合っている状態を5秒間キープし、5~10回繰り返す。

③「のどE体操」…アルファベットの「E」を「イィ~」と長く発声させる感じで、口を横に伸ばす。奥歯を食いしばるように力を入れて、のどの筋肉を緊張させる状態を5秒間キープし、5~10回繰り返す。

④「シンク・スワローでカラ嚥下」…2~3回、ゆっくりとつばを飲み込む。

⑤「深呼吸」…2~3回、口から長くゆっくりと息を吐き、吐ききったら鼻から息を吸う。

⑥ 「首を左右に倒す」…ゆっくりと首を真横に倒し、 これ以上倒れないというところまできたら1秒停止する。これを左右2~3回繰り返す。

⑦ 「首を大きく回す」…右回り、左回り、首を2~3回大きく回す。

⑧ 「舌出し体操」…口を開いて思いっきり舌を突き出し、「上」「下」「左」「右」の順にできるだけ曲げる。これを2~3回繰り返す。

⑨ 「胸張り腕上げ体操」…体の後ろで手を組んで、胸を張りながらゆっくり両腕を上げていく。この時、顔を上げ、背中の肩甲骨をギューッとくっつけて体をそらせる。これを2~3回繰り返す。

⑩ 「深呼吸」…2~3回、口から長くゆっくりと息を吐き、吐ききったら鼻から息を吸う。

70代以上の老年者は①~⑩の一連の基礎運動を一通り、毎食前に行う。40~60代の壮年者は朝でも夜でも構わないので1日1セットするとよい。

 

2 「シャキア・トレーニング」(のどの筋肉を強化する一番シンプルな運動)

 布団やマットなどに枕をしないでまっすぐ仰向けになる。そして、両肩をつけたまま、頭だけ高く上げたら、そのポイントで30秒~1分間静止し、その後、頭をゆっくり下す。これを5~10回繰り返す。1日に2~3セット行うとよい。ただし、頚椎症やムチ打ちなど、首に疾患をお持ちの方や、高血圧症の方は行うことができないので、1の①「嚥下おでこ体操」を入念に行うとよい。

 

【呼吸トレ】

3 「ペットボトル体操」(膨らませたり萎ませたりして肺活量アップ運動)

 空になったペットボトルを口に咥え、思いっきり息を吸ってクシャッと縮んでペシャンコになるまで萎ませる。その後、思いっきり息を吐いてパンパンになるまで膨らませる。これを5回ほど繰り返す。ペットボトルを選ぶポイントは、のどの機能や呼吸機能がかなり衰えている方や高齢の方は、「ミネラルウォーターなどの柔らかい材質でできたペットボトル500mℓ」からスタートし、慣れてきたら「材質が固めの500mℓ」「材質が柔らかい1ℓ」へと少しずつハードルを上げていくとよい。

 

4 「風船ふくらまし&吹き戻し」(軽く膨らませられる肺活量を維持する運動)

 風船を「1日に1回膨らませる」からスタートし、「1週間に1回、連続3回膨らませる」「1か月に10回をノルマにする」といったように、自分なりのルールを決めてトレーニングする。

 風船を膨らませるほどの肺活量がない方には、よくお祭りの屋台などで売られている「吹き戻し」というおもちゃを使って吹く運動をする。

 

5 「吹き矢」(楽しみながら呼吸機能を維持・向上する運動)

 筒と矢と的があれば誰でもすぐにできる「吹き矢」。これらの道具はインターネットやスポーツ用品店などで購入できるが、手作りでも簡単にできる。勢いよく息を吐いて矢を放ち、的に当てられるかどうかを楽しみながら行うとよい。

 

6 「口すぼめ呼吸」(いつでもどこでもできる呼吸機能を維持・向上させ運動)

① 軽く口をすぼめてゆっくりと口から息を吐く。肺の中の空気を全部外に出し切るつもりで吐く。(おなかが徐々に引っ込むように)

② 鼻から息を吸う。(おなかが膨らむように)

③ 再び口をすぼめ口から息を吐く。(吐く時間が吸う時間の2倍ぐらいになるように)

 

【発声トレ】

7 「ハイトーンボイス・カラオケ」(歌好きには一石二鳥ののどの運動)

 カラオケを楽しむ時には、高い声(ハイトーンボイス)を出して歌う。それ以外でも「車の中でカーステレオに合わせて高い声で歌う」「健康のために、休日は“一人カラオケ”をして高い声で歌う」などをする。

 

8 「のど仏スクワット」(のどの上下運動がはっきり分かる発声法による運動)

 「高い声」と「低い声」を交互に繰り返し続けていれば、のど仏はそのたびごとに上がったり下がったりを繰り返す。この上下運動を行うような発声練習をする。例えば、演劇部の部員がより滑舌や声の通りをよくするために行う、「ア・エ・イ・ウ・エ・オ・ア・オ」という発声練習を「高低」をつけて行う。すなわち、「ア」「エ」「イ」を発声する時は思いっきり高い声で、「ウ」「オ」を発声する時は思いっきり低い声を出すようにするのである。

 

 以上、【のどの筋トレ】【呼吸トレ】【発声トレ】別の、全部で8つの「のど体操」の要領について説明した。私は今のところ、「飲み込む力」の衰えを自覚している訳ではないが、最初に説明した「ごっくんトレーニング」の中の一部は今までも入浴中に実践していた。今後は、それ以外の「のど体操」も少しずつ意識的に日常生活に取り入れていこうと考えている。皆さんも、死亡原因で第3位にまでなった「誤嚥性肺炎」を防止するために、今から3つの機能別「のど体操」の中から1つずつ選んで実践し始めてはどうでしょうか。