ようこそ!「もしもし雑学通信社」へ

「人生・生き方」「教育・子育て」「健康・スポーツ」などについて考え、雑学的な知識を参考にしながらエッセイ風に綴るblogです。

「哲学対話」を行う方法で知っておくべき“コツ”とは…~苫野一徳著『はじめての哲学的思考』から学ぶ~

 読者の皆様、明けましておめでとうございます。元号が「令和」になって初めての正月。いよいよ「東京オリンピックパラリンピック2020」が開催される記念すべき年の始め、1月3日。私にとっては、当記事が本年最初の当ブログの記事である。今、お屠蘇気分のままで執筆しているので、支離滅裂な文章になってしまいそうだが、どうかご容赦のほどを…。

 

 さて、当記事のテーマは「哲学対話」を行う方法で知っておくべき“コツ”についてである。前回の記事も実践的な「対話のファシリテーターの役割」について触れたので、その続編ともいうべきものになるであろう。しかし、今回この年末年始に掛けて読んだのは、私が当ブログの記事で今までに何度もその著書を取り上げている哲学者・苫野一徳氏が著した『はじめての哲学的思考』だったので、やや理論的な方法を紹介することになると思う。私としては、「哲学対話」を行う根本的な方法論について認識を深める機会にしたいので、どうしても整理しておきたかったのである。この点も、ご容赦ください。

 

 前口上はこれぐらいにして、そろそろ本題に入っていこう。著者は、本書の第1・2部で哲学及び哲学的思考の“奥義”について、第3部で「哲学対話」を行う方法の“コツ”とその具体例について、分かりやすく説明や紹介をしている。私は、この第1・2部の内容からも多くのことを学ぶことができたが、今回は当記事のテーマに即して第3部の内容から学んだ、「哲学対話」を行う方法で知っておくべき“コツ”に絞ってまとめておきたい。

 

 まず、「哲学対話」の方法の一つ目は、著者が「価値観・感受性の交換対話」と呼んでいるもの。具体的には、小説やマンガ・映画・音楽などについて何が自分の心を打ったのか、あるいは打たなかったのか、そのことを言葉にして交換し合うという“批評”のようなこと。著者はこの対話には、次のような3つの哲学的な意義があると言っている。

 

○ 「自分自身をより深く知る(自己了解が深まる)」という点

○ 「お互いに“他者尊重”の土台を築き合う(他者了解も深まる)」という点

○ 「異なる意見の持ち主たちが何らかの“共通了解”を見出し合う」という点

特に、3番目の視点こそが哲学対話の本領なのだと、著者は強調している。

 

 次に、「哲学対話」の方法の二つ目は、著者が「共通了解志向型対話」(超ディベート)と呼んでいるもの。具体的には、肯定側と否定側、どちらの方が説得力を持っていたかを競う競技ディベートではなく、議論の末にお互いに納得できる“第三のアイデア”を出し合う議論のこと。著者は、環境問題・格差問題・テロリズム問題など、多くの正解のない問題にあふれた現代では、価値観の異なった人たちが“共通了解”を見出す議論こそ、私たちは洗練させていく必要があるのではないかと力説している。

 

 続いて、「哲学対話」の方法の三つ目は、フッサール現象学の用語である「本質観取」とか「本質洞察」とか呼ばれているもので、物事の“本質”を洞察する思考の方法のこと。もう少し詳しく説明すれば、自分の素朴な直観や感受性を疑って、自分と他人たちの間を貫いている「意味の関係」の秩序を取り出してそれをよく意識するような方法のことである。でも、この説明だけでは具体的にどのような方法なのかはイメージしにくい。そこで、著者は「恋」をテーマにして大学生と実際にやった本質観取を紹介してくれている。ここでは、その実際の内容をまとめることはしないが、本質観取の注意点として取り上げている、次の五つの内容を紹介しておこう。

 

① 本質観取は、辞書的な“定義”づけをするのとは全く違い、言葉(概念)の本質的な“意味”をつかみ取るものである。

② 本質観取は、ふだんはほとんど無意識に感じ取っている本質を、自覚的な言葉にして縦横に編み上げて表現するものである。

③ 本質観取は、その概念についての経験がほとんどなければ、実際に行うのは難しいものである。

④ 本質観取は、実際にやる時、テーマやメンバーに十分な配慮と注意をし、安心と承認の場にする必要がある。

⑤ 本質観取は、6人から12人くらいでやると、より普遍的な本質にたどり着きやすくなる。

 

 さらに、上述した本質観取の手順について、哲学者の西研氏が提案した内容(『本質学研究』第2号所収「本質観取とエピソード記述」)を次にまとめておこう。

 

① 体験(わたしの“確信”)に即して考える。

② 問題意識を出し合う。

③ 事例を出し合う。

④ 事例を分類し名前を付ける。(キーワードを見つける)

⑤ 全ての事例の共通性を考える。

⑥ 最初の問題意識や疑問点に答える。

 

 また、著者が本質観取の際に意識している“コツ”についても付け加えておこう。それは、手順の④~⑤のあたりで次に挙げる四つの観点で議論をするとよいらしい。

 

○ 「本質定義」…とりあえずテーマにした言葉の本質を短く言い表したもの。

○ 「類似概念との違い」…取り上げた言葉と似た概念との違いを言い表したもの。

○ 「本質特徴」(本質契機)…その特徴がないとその言葉とは呼べないような幾つかの特徴を言い表したもの。

○ 「発生的本質」…その言葉を経験したりその言葉が発生したりした理由を、自分の成長の観点から言い表したもの。

 

 以上、本書を読んで「哲学対話」を行う方法で知っておくべき“コツ”について整理してみた。特に「哲学対話」の方法の三つ目に紹介した「本質観取」(本質洞察)については、補足説明を加えて少し詳しくまとめてみたが、その理由は私自身がそのような「哲学対話」をしてみたいという強い願いがあるからである。でも、初めて「哲学対話」=「哲学カフェ」を行う際は、一つ目の「価値観・感受性の交換対話」や二つ目の「共通了解志向型対話」(超ディベート)を意識してやってみたいと考えている。年始早々から「哲学対話」=「哲学カフェ」の具体的なイメージが思い浮かんできたので、私はその実践化に向けて心がワクワクしている。今年は例年以上にアグレッシブに行動する年にしたい!!