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“ボッチャ”というパラスポーツの特性を生かした異校種・異学年間の交流学習に感動!

 「こ~うじ、こ~うじ、こ~うじ…」という名前の連呼と共に大きな手拍子の中、特別支援学校・中等部の浩二君は、少し緊張気味の表情で投球動作を始めた。そして、運営係の小学校2年生が赤旗を振り降ろすと、意を決したように青ボールが山なりになるように投球した。青ボールは白いジャックボールに接するぐらいの位置に止まった。「ワーッ!」という歓声が起こった。浩二君は同じチームの仲間たちとハイタッチを何度もして、喜びを身体全体で表している。中学生のチームからも拍手が沸き起こった。・・・

 

 先月31日(金)、地元国立大学教育学部附属小学校の教育研究大会において、私が参観したのは第2学年花組の「ボッチャん・マドンナ投合戦!―ターゲット型ゲーム―」(体育科+ぎんなん学習)の単元の6/6時(最終時)。2年生たちが特支生や中学生を招待した“ボッチャ”大会を自主的に運営するという活動内容だった。担任のH先生は本時、全く指導することなく、子どもたちが自主的・主体的に大会を運営していたので、私は本当に驚いた。事前に先生から必要な指導や助言はもちろんあったと思うが、当日の子どもたちの活動の様子やその表情を見た限りでは、自分たちが考えたり準備したりしてきたことに対して自信をもって臨んでいた。「2年生でもここまでやれるのか!」というのが、私の素直な感想であった。

 

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 本単元は、「共生」「共学」「共感」というテーマの下で、体育科とぎんなん学習(生活科+特別活動/学校行事除く)を関連させた教科等横断的な単元として構想し、第2学年の年間指導計画に位置付けたものである。2学期に4年生との鬼合戦対決や附属中1年生との駅伝対決等を企画・運営したり、附属特支校から「遊びランド」や“ボッチャ”の授業に招待されて交流してきた附属小2年花組の子どもたちは、今度は自分たちが企画・運営する“ボッチャ”大会に特支生や中学生を招待して対決したいという思いをもった。そこで、まず特支生との練習試合を通して自分の課題を見つけ【出合いの段階】、次にその解決のために練習を重ねて投球技術や戦術を高めてきた。【挑戦の段階】そして、その成果を確かめるために“ボッチャ”大会を企画・運営することになり、本時がまさにその大会当日だったのである。【感動の段階】

 

 本単元で扱う“ボッチャ”は、パラリンピックスポーツの一つであり、的となるジャックボールにどれだけ自チームのボールを多く近付けられるかを競うゲームである。的に向かってボールを投げたり転がしたりするという技能はシンプルなので、全員の子が「できた!」「うまくいった!」という運動の楽しさや喜びを味わうことができる。また、正式なルールではなく特支校生が考えた工夫したルールを採用しているので、チームで順番に投げる人を交代しながらゲームを進めるから、戦術についてチーム内で活発に話し合うことができる。

 

 実際の場面では、異校種・異学年での対決であるにもかかわらず、“ボッチャ”の特性上、ほぼ対等な対決になっていた。また、冒頭で描写したように投球する人の名前を他の全員で手拍子と共に連呼しながら応援するので、大変盛り上がっていた。さらに、それらを小学2年生がきびきびとした態度で運営しているので何とも微笑ましく、温かい雰囲気に満ちていた。パラスポーツに対して「する・みる・支える」という多様な関わり方が経験することができるとともに、「オリパラ教育」のよいモデルにもなっていた。

 

 ただし、私がちょっと残念だったことは、チーム内で戦術についての話合いの場面がほとんどなかったことである。確かに、一人一人の子どもは各チームのボールの位置関係を把握した上で、どのように投球しようかと内面では考えていたと思う。しかし、チーム対チームの競争型ゲームなので、やはりチーム内で戦術について共通理解することは大切な学習内容になると私は考える。だから、私は単元の評価観点の「思考・判断」に「チーム内で戦術について考えたり、それを成功させようとしたりする。」という内容を位置付けて、教師が適切な指導・助言をすればよいと思った。このような体育科研究としての課題は残ったが、本時は爽やかな感動を与えてくれる授業だったことは紛れもない事実であった。