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「こども哲学」もやってみたいなあ…~こども哲学 おとな哲学 アーダコーダ著『こども哲学ハンドブック―自由に考え、自由に話す場のつくり方―』を読んで~

 前回の記事は、『哲学は対話する―プラトンフッサールの“共通了解をつくる方法”―』(西研著)を読んで、「哲学対話」において共通了解を図る意義とその方法について学んだことをまとめてみた。そこでは、哲学の目的を「一人一人の生き方と社会の在り方をよりよくすること」ととらえ、その方法を「対話」と考え実践したプラトンソクラテス哲学に基づくフッサール現象学の理論的な内容について、私なりにまとめた上で簡潔な所感も付け加えた。その結果、本県教職員を対象にした「哲学対話」を実施するための原理のようなものを、私は掴むことができたと思う。

 

 そこで今回は、その「哲学対話」の源流である「こども哲学」の入門書『こども哲学ハンドブック―自由に考え、自由に話す場のつくり方―』(こども哲学 おとな哲学 アーダコーダ著)を読んで感じたり考えたりしたことを綴ってみたい。

 

 本書は、特別非営利活動法人の「こども哲学 おとな哲学 アーダコーダ」が開催する「こども哲学ファシリテーター養成講座」のテキストを基に再編し、加筆修正されたものであり、「こども哲学」を自分で始めたいという者に向けた入門書である。本書は、PROLOGUE「こどもの謎と出会う」に続いて、CHAPTER1「事前準備」、CHAPTER2「こども哲学の進め方」、CHAPTER3「問いを深めるコツ」という3本柱を本論として立て、最後に「付録」として実践事例や参考書籍・情報等を付け足すという構成になっている。

 

 私が本書を読み通した後で強く感じたのは、「こども哲学」を開催し進行しようとする者にとって、「事前から事中・事後にわたって行うことのノウハウを丁寧に示してくれている最適なテキストになっているなあ。」ということである。特に私のようにこれから「哲学対話」を開催しようとする者にとっても、大いに参考になることが多かった。

 

    例えば、CHAPTER3「問いを深めるコツ」の中で示してくれている、ファシリテーターが対話中に道に迷う時の3つのパターン。それは、「抽象的すぎること」「意見がかみ合わないこと」「どこかに間違いがあること」なのであるが、それぞれのページには3つずつPOINTも示されており、具体的に役立つものであった。

 

 また、同じくCHAPTER3の中にある、「わからない」を見つける7つの質問。「こども哲学」では、自分や誰かの「わからない」を見つけることや新しい視点で問いを出すことが重要なので、ファシリテーターが疑問に思ったことやわからないことがあったら、どんどん使うとよい質問らしいが、これは「おとな哲学」でも同様に重要だと私は思った。具体的に質問の内容を列挙してみよう。

① 意味の明確化…「~ってどういう意味ですか。」「どういうときにこの言葉を使う?」

② 理由…「なぜそう思うの?」「そう思う理由はあるかな?」

③ 証拠…「例えば?」「そう言える根拠となるものはある?」「何か具体例は思いつく?」

④ 真偽…「それってほんとう?」「どうやったらそれがほんとうだと言えると思う?」

⑤ 一般化/反例…「いつでもそうかな?」「それはいつでも当てはまることかな?」「当てはまらない例(反例)はないかな?」

⑥ 前提…「この意見の根っこにはどんな考えがある?」「その考えに何か前提となっていることはないかな?」「とうやってその考えにたどり着いたの?」

⑦ 含意…「もしそうだと、どうなるのかな?」「そういうふうに考えたとすると、最後はどうなるだろう?」

 どれも「わからない」状況に応じて質問する場合に役に立つものである。

 

 さらに、同じくCHAPTER3の中にある、対話中に思考の迷いに陥りそうな時にファシリテーターが使う有効な6つの技法。これらも「おとな哲学」においても、やはり重要な技法だと思った。具体的に使うケースと使い方について整理してみよう。

① 思考タイムづくり【議論が停滞してきた時や、答えを出すことを急いでしまう時】…質問やコメントの後に数十秒から数分の時間を取る方法。

② まとめてもらう【話題が複雑でわかりにくい時や、問いを見失った時】…誰かに要約を頼む方法。

③ 全員に回答してもらう【賛成か反対か立場を明確にしたい時や、広く具体例を集めたい時】…賛否を全員に順番に答えてもらうか、挙手をしてもらって答えてもらう方法。

④ 追いかけ質問をする【発言者の意図をほかの人にもわかりやすくしたい時】…発言に対して追いかけて質問をする方法。

⑤ あえて弁護論・あえて反対論【参加者の意見が偏っている時や、参加者から反対意見が出ない時】…あえて誰かの意見に賛成して弁護したり、あえて誰かの意見に反対して反論や反例を出してみる方法。

⑥ 代案を提案してもらう【参加者の意見が偏っている時や、決まりかけた結論をもう少し疑ってみたい時】…ある意見に対して、代わりとなる意見や考え、アイデアなどを求める方法。

 

 以上、「おとな哲学」として「哲学対話」を進行する上でも大いに参考になりそうな事項をまとめてみた。私はこの作業をしながら、「大人に対するだけでなく、子どもに対しても哲学対話をしてみたい。」と思うようになった。幼児から小学生ぐらいの子どもを対象とした「こども哲学」を開催することを視野に入れて、地元の公民館や小学校、幼稚園、保育所等に打診してみようかな…。