小さな一歩でも何か行動を起こして「場」を作れば、人が集まり何かが始まるんだなあ…。
「男女共同参画社会の実現」を目指して事業展開している当財団が、９月１９日（土）に開催した「公開講座」受講後の、私の素直な感想である。「講演会」と「トークセッション」の２部構成のイベントだったが、特に第１部の「講演会」における講師・合同会社のら代表社員 新井純子さんの自然な語り口と実践内容が私の心に残った。
そこで今回は、「語り合いの場がまちに未来の種をまく~「ヘルシーカフェのら」の実践から~」というテーマで語られた新井さんの講演内容の概要と、それに対する私の簡単な所感を綴ってみたい。
まず、新井さんの簡単なプロフィールを紹介しよう。彼女は「ヘルシーカフェのら」の店主。平成１０年埼玉県大宮市で女性の自主学習グループ「あれあれあ」を結成し、多くのワークショップを開催。これらの経験と周囲からの応援もあり、住んでうれしいまち、誰もが主役で、助けたり助けられたりできる地域づくりをめざし、平成２１年から「ヘルシーカフェのら」を運営。様々な「食」と「おしゃべり」の空間が作られ、多彩なネットワークが広がっている。
「ヘルシーカフェのら」のある場所を、プレゼンを活用して紹介することから始まった新井さんの講話は、立ち上げの動機やその後の経緯へと自然に展開していった。そもそもは、彼女が子育て中に孤独感や男女の不平等感を味わい、自分や世の中のことについて深く考え知ったことを基にして叶えたい夢を描き、それを応募論文にまとめたことから始まったそうである。その内容は、次のような課題にまとめられる。
〇 様々な人の出会いの場
〇 女性の学習支援
〇 高齢者の生きがい支援、就労支援
〇 若者のソーシャル・スキル・トレーニング、就労支援
〇 子育て支援、子育ち支援
〇 共稼ぎ家庭の買い物等の家事支援
〇 保育所等の送迎支援
〇 女性の健康づくり支援
〇 民間公民館機能
〇 地域のコミュニティづくり支援
〇 市民活動支援
〇 地産地消費の食べ物
これらの課題は横断的なものであり、その行政的な解決は、例えば「まちづくり課」や「男女共同参画課」などが担うのが適切。しかし、彼女が論文を発表した当時はそのような部署はなかったので、自分の力で少しでも課題解決していこうと立ち上がったらしい。
立ち上げた当初の「ヘルシーカフェのら」は、「飲食」と「広場」の機能だけだったが、その内に「販売」「情報提供」「地域への協力」等の機能が加わってきたという。現在、有償スタッフ３人のほか多くのボランティアスタッフで運営。営業時間は火曜日から土曜日の１１時半から１７時。収入源は飲食料やワークショップ広場利用料等だそうである。提供している料理の食材は、全て地元・埼玉県産。コロナ禍においても、今までの親密な関係のおかげで食材の入手には困らなかったらしい。
「ヘルシーカフェのら」に集う人々は、０歳から９０歳代の飲食する人たち。また、広場ワークショップの主催者やボランティアの人たち。さらに、大学の教師や学生、行政やＮＰＯの人たちと、多岐にわたっている。活動内容は、「地域課題や自分課題のワークショップ」、「ファミリーコンサートなどの家族カフェ」、「車座おしゃべりカフェ」、通称「おじさん講座」等。大学生による「子ども食堂」や「タイ料理を楽しむ会」、「シングル家族へのワークショップ」等も開催されたという。現在、コロナ禍の中で広場ワークショップはほとんど開催されていないが、少人数での語り合いの場として使われている。そのような情況ではあるが、彼女は「これから何かが始まりそう。」と目を輝かせていた。
最後に、「ヘルシーカフェのら」の実践から学んだことを、彼女は次のようにまとめた。
〇 地域に住んでいる人は多種多様で魅力的な力を持っている。
〇 人だけでなく、文化や自然とも出会い、つながっていく。
〇 力を出し合うために、「つながる」「つなげる」ことが大切。
〇 気が付いた人がはじめることが大切。
〇 サービスを受けるばかりでなく、「誰か」「自然」のために力を使うことが大切。
以前から構想していた「哲学対話」や「こども哲学」の立ち上げをコロナ禍によって保留していた私にとって、今回の新井さんの講話内容は勇気を与えてくれるものであった。
そうなのだ！語り合いの場が未来の種をまくことになる！！
