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多忙生活の中、学校生活支援員研修会で講話をしました!~小崎恭弘著『発達が気になる&グレーゾーンの子どもを伸ばす 声かけノート』から学んだことを基にして~

 お泊まりをしていた孫Hと遊んだり世話をしたりすることに追われた7月末の土日が過ぎ、ちょっと一息入れたいと思っていた8月に入っても、私の多忙生活は続いていた。第1週目には、市内の4つの児童発達支援センターへ通っている重い障害のある年長児に関する教育相談があった。対象児の園での生活の様子を参観して行動観察を丁寧にした上で、保護者と担任の先生と話し合った。成育歴や具体的な障害特性等について保護者に詳しく訊いたり、対象児の発達状況や普段の園生活の様子等について担任の先生から情報を得たりする面談は、いろいろと神経を使うので疲れる。また、収集した情報に基づいて審議資料を作成する労力を考えると、ややもすると気力が萎えてくる。しかし、対象児の将来を左右する学びの場を判断する大事な仕事なので、一言一句を疎かにせずにパソコンのキーボード叩いている。

 

 さて、8月の第一土日は、今度は二女に連れられた孫Mがお泊りをした。この4月から保育園に行くようになったMは6月にも日帰りで来たことがあったが、久し振りに再会したような気分になった。というのは、前回会った時はまだ2・3歩しか歩けなかったMは、我が家のリビングのフロアに下ろした途端に、各種のおもちゃを置いていたテーブルの方へどんどんと歩いて行ったのである。そのしっかりした足取りを、私たちじじばばは大きな目を開いて追いながら、「すごいね、Mちゃん。」と声を合わせるように言った。それから翌日に帰るまでの間、私たちはMの後を追いかけるように世話をした。ただ、Mは初めて体験することに対しては慎重になる子なので、結構気を遣いながら関わることが多かった。

 

 特に水遊びについては、保育園でほとんど水に触れようともしないらしい。そこで、日曜日の昼間に我が家の駐車場スペースを利用して水遊びをさせた時も、水を浅く溜めた噴水マットへ私がMを抱っこして入り、徐々に水に慣れていくようにした。すると、最初は足の指先が水にちょっと触れただけで大騒ぎをしていたMも、私の胡坐の中に入って足で水を蹴ることができるようになってきた。また、噴水マットの上に立ち、シャワーの水を背中に浴びることができるようになってきた。そこで、私はそっとMの頭に水を少しずつ垂らしてみた。すると、Mは頭から滴る水のことを気にしなくなっていた。Mは水と少し仲良くなったようだった。

 

 そんな土日が過ぎ、疲れを癒すこともできないまま今週に入った訳だが、私は8日(月)9日(火)の2日続いて学校生活支援員研修会で講話をすることになっていた。本来なら学校教育課の担当指導主事が行う仕事だと思ったが、実施計画案を策定された時に私たち特別支援教育・指導員という立場の役割になっていたのである。私は言い逃れをするように異義を唱えるのは嫌だったので引き受けた。それが約1か月前だったので、私は早速どのような講話内容にするか考え始めた。そして、様々に考えを巡らせた末に、ある本を参考にして「発達障害をもつ子どもへの支援のあり方と言葉掛けの工夫」を中心に組み立てようと決めた。そのある本とは、市内のジュンク堂三越店で入手した『発達が気になる&グレーゾーンの子どもを伸ばす 声かけノート』(小崎恭弘著)である。

 本書は、大阪教育大学教授の小崎氏が自身の保育士経験を基にして、「発達が気になる、またはグレーゾーンの子どもへの関わり方や言葉の掛け方」を要領よくまとめた保護者向きの本である。特に具体的な行動特性から見て気になる子どもの接し方を記述しているので、保護者にも大変分かりやすい。どのような行動特性でとらえているかというと、「コミュニケーションが苦手な子ども」「乱暴な子ども」「こだわりが強い子ども」「無気力で諦めがちな子ども」「内向的な子ども」である。私はこのような手法を援用すれば、学校生活支援員の皆さんにも内容を理解しやすいのではないかと考えたのである。

 

 私の実際の講話は、PowerPointを使ったプレゼン(表題を除くと13枚のスライド)を映しながら、その内容について詳しく解説したり簡単な補説をしたりした。以下、そのプレゼンの概要について紹介しよう。

 

 最初に、事前に学校生活支援員の皆さんに書いてもらったアンケートを集計・分析し、「支援をする上での困り感」と「研修会で知りたいこと」という項目に整理したスライド3枚に基づいて話した。「支援をする上での困り感」の1枚目は、本書を参考にして行動特性別の子どもへの対応をアンケートの記述数の多い順に列挙したスライド。具体的には、「危険な行為をしたり乱暴をしたりする子ども」「こだわりが強く、やっている活動を止められない子ども」「授業に集中できず、やる気のない子ども」「学習に遅れがちな子ども」の4つのタイプ。「支援をする上での困り感」の2枚目には、それら以外の項目「対象の子どもとの信頼関係のつくり方」「周りの子どもとの関係に対する配慮の仕方」等を示した。さらに、全体では3枚目になる「研修会で知りたいこと」のスライドには、「様々な発達障害の特性とその支援のあり方(特に言葉掛けの工夫)」「学校生活支援員として知っておくべき言葉の意味」「担任や保護者との連携の仕方」等を挙げておいた。

 

 次に、4枚目の「通常の学級に在籍して特別な教育的配慮を必要としている子どもたち」と題したスライドには、その背景や原因になっている「発達障害」の名称等をまとめた。その説明の中では、「発達障害」名は医師が診断することや実際は「発達障害」の重複が多いこと、「発達障害」はレッテルを貼るのではなく支援を行う上で参考にすることなどを強調した。また、5枚目の「発達障害の概念図」では、その障害特性等を具体的な様態例を挙げながら解説した。

 

 そして、本講話の中心とも言える6~11枚目では、「個の特性等に応じた支援のあり方と言葉掛けの工夫」の具体的な内容(これらは1枚目のスライドで示した行動特性別の子どもへの対応順)等をまとめて示した。ここで全てのスライド内容を紹介するのは大変なので、実例として「こだわりが強く、やっている活動がやめられない子ども」を取り上げたい。

◇ 支援のあり方…本人のこだわりを肯定的に受け止めつつ、気持ちの切り替えにつながる別の視点を与えるように関わる。

〇 言葉掛けの工夫…①「楽しそうだね。」「〇〇が好きなんだね。」 ②「後、何分で追われそうかな。」 ③「そろそろ時間だよ。」「合言葉は何だった?」 ④「気持ちの切り替えがよくできたね。」

これらの説明の際には、実際の場面を想定しながらできるだけ具体的に解説をしつつ、参考になる補説を付け加えるように心掛けた。会場の学校生活支援員の中には大きく肯きながら聴いていた方もいたので、私の考えは通じていたのかなと嬉しく思った。なお、11枚目のスライドには、以上のような言葉掛けに関する総括的な内容<「ちゃんと伝わる」言葉掛けのポイント>を示しておいた。

 

 また、「周りの子への配慮」と題した12枚目では、合理的配慮の概念絵図を基にしながら、同じ物を与える「平等」ではなく、同じ機会を与える「公平」を大切にすることや、私が子どもの頃に経験した「三角ベース」のルールが合理的配慮の思想に基づいていたことなどについて説明した。

 

 最後の13枚目は、私の講話後に予定されていたグループ協議の話題例をいくつか挙げておき、本講話の締めくくりとともに次の活動への橋渡しとした。40分弱の時間だったが、あっという間だった。私としては、参加者のマスク越しの表情から強い手応えを感じることができた。これも、本講話の中心となる内容を構想する際に大きな示唆を与えてくれた本書のお陰だと思いながら、改めて表紙をしみじみとした気分で今、眺めている。著者の小崎さん、有難うございました。