2月3日(金)に開催された第101回愛媛教育研究大会(幼稚園・小学校の部)へ参加させてもらった。新型コロナウイルスの感染拡大のために、この2年間はオンラインでの開催だったので、対面での開催は3年振りである。私は午前中2つの体育科の公開授業を参観し、午後からは体育科の研究協議会に参加したので、今回はそれぞれの内容の概要と簡単な所感をまとめてみたい。
1年生の体育科「つながるベースボール~投げて走ってあつまって~」の公開授業は、1チーム4人で攻撃が一巡したら攻守交替をして3回まで、ボールを打つのではなく投げる、攻めは投げる人以外は塁いて満塁の状態で攻撃し一人ホームインで1点、守りは捕球者とその他の3人がアウトゾーンにあるコーンに集まって4人全員が触れた時点でアウトという「基本ルール」の下、道具(ボール)や場(ベース間の距離、アウトゾーンの位置と数)、得点方法(追加点、ホームインの点数)を易しくしたりして、低学年の子どもたちでもベースボール型のスポーツの楽しさや面白さが味わえるような工夫をしていた。
本時(6/8時)は「オリジナルルールでゲームを楽しもう」というテーマで、子どもたちは対戦チームと合意したオリジナルルールのゲームを試しながら、「みんなが楽しめて面白いゲームになっているか」という観点でルールを見直していた。審判チームは対戦しているチームがしっかりルールを守っているか、攻撃側は何点得点したかなど、公平に判断していた。どの子も自分の役割を意識して、みんなでゲームを楽しもうとする姿を見せていて、このような工夫した教材にしたら、1年生でもベースボール型のスポーツの楽しさや面白さを味わわせることができるのだなあと、野球が大好きな私はついほくそ笑んでしまった。
5年生の体育科「愛スポーツ―みんなが楽しむ みんなで楽しむ―」の公開授業は、単元前半で「ボール運動」領域として競技スポーツに近い「タグラクビ―」を、後半で「体ほぐしの運動」領域として年齢・性別・運動神経・障がいなどにかかわらず誰もが楽しめるという「ゆるスポーツ」の考え方を取り入れた「シッティングラクビ―」や「いもむしラクビ―」を経験することで、それぞれの「スポーツとしてのよさ」を味わわせ、「豊かなスポーツライフ」の実現につなげようとしていた。
本時(8/10時)は「『みんなが楽しい みんなで楽しい』ゲームを考えよう」といテーマで、子どもたちは「互いに全力でプレイしながら、接戦になるゲーム」にするためにルール(人数・道具・場・条件等)を調整しつつ、交代しながら3種類のラクビ―というゴール型のスポーツの楽しさや喜びを味わっていた。審判チームは最初に自分たちが選んだ場に1チームが残り、変更したルールを紹介したりゲーム中によりよく工夫したルールを採用したりしながら、平等な視点をもちつつも接戦になるような運営をしていた。このような工夫した教材を開発した背景には、「Adapted(あつまる)」「Access(つながる)」「Action(つくる)」という3つの「A」の意味を込めて単元名を「愛(Aい)スポーツ」と名付けた担任の思いがあることを強く感じて、私は少なからず感銘してしまった。
体育科の研究協議会では、まず今期研究の体育科のテーマ「『スポーツをつくる/はぐくむ』視点を大切にすることで、豊かなスポーツライフを実現しようとする子どもを育てる」の理論説明が、プレゼンテーションを活用して行われた。その後、2つの公開授業ごとに研究協議があった。1年生では、本単元を通じての投げる動きの変容や4種類のボールの選定基準、ベースの置き方に関する教師の意図等についての質疑応答があった。また、応援する子どもに対する指導や子どもと教師のルールに対する基準の擦り合わせ、振り返りカードを書く際の視点、中・高学年へ向けた発展性への配慮点等について、参加者から前向きな感想や意見が出された。
5年生では、最初にステージⅠからⅡへの移行の仕方やステージⅡの教育課程上の位置付け、得意な子の不満を克服するための方法等についての質疑応答があった。次に、子どもたちの主体的に話し合う態度やシッティングラグビーやタグラグビーのもつ特性、多様性に応じた柔軟なルールの創造等について、参加者から「みんなが楽しい みんなで楽しい」スポーツについて賛同する感想や意見等が出された。私も子どもの頃に原っぱで異年齢の子どもたちがそれぞれの能力に応じたルールを自分たちで決めて行っていた「三角ベースボール」のことを例にしながら、体育科における特別支援教育の視点の重要さについて熱く語ってしまった。
この2年間、新型コロナウイルスの感染拡大によって対面で開催することができなかったが、愛媛大学教育学部附属小学校(現職中に15年間も勤務した学校)の教育研究大会に今回久し振りに参加してみて、やっぱり実際の公開授業を参観しての研究協議は楽しいなあと実感した。今までコロナ禍で普段の教育活動も様々に制限されて、実践研究が思うようにできず苦労が多かったと思う。体育科の実践研究を担当している二人の若い先生方の提案内容は素晴らしいものだった。もちろん二人を理論的にも実践的にも支えている教育学部の体育科教育担当の先生方のお力は大きいと推察する。でも、やはり現場の教師の日々の多忙な勤務実態を実感的に理解している私には、その現場の大変さはよく分かる。くれぐれも健康には留意して誠実な研究態度でこれからも頑張ってほしいと、私は帰宅中の車の中で密かに願っていた。