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痛みと闘う日々(2)~「自然治癒力」と「精神力」について~

    12月9日(金)に、二番目の整形外科病院を再度受診した。朝・昼・夜(寝る前)と服用して日中は一定の効果があった今までの鎮痛薬(過剰に興奮した神経から発信される痛みの信号を抑え、痛みを和らげる薬)以外に、夜、数時間眠った後に起きると必ず襲ってくる激痛を抑えるために効果の高いと言われる消炎鎮痛薬を追加してもらった。夜にまとまった睡眠時間を確保するためである。

 

    また、B医師に「なぜ腰椎椎間板ヘルニアなのに私の場合は身体を前屈しても痛くならないのか。」と質問したら、「腰椎椎間板ヘルニアでも腰部脊柱管狭窄症でも、多くの患者さんは前屈みの姿勢の方が楽だと言っている。あまり気にしなくてもよい。」との回答。B医師は私の病態からあくまで病名は「腰椎椎間板ヘルニア」であり、治療方針は「まずは左下肢に起きている痛みを軽減し、痛みの悪循環にならないようにすることが第一だ。後は飛び出たヘルニア(髄核)が早く自然消滅するのを待つしかない。どうしても痛みを我慢できなければ手術という方法もあるけど、それは最後の手段だ。」と説明してくれたので、私は納得した。というのは、この病気について自分なりに学習していたからである。

 

    最近までヘルニアは手術で摘出しないと治らないと考えられていたが、近年MRI検査で経過を観察できるようになり、ヘルニアが自然に消滅する例が多いことが明らかになってきた。現在、最低3か月間は手術しないで経過を観察するのが主流なのである。では、なぜヘルニアは自然消滅するのか?それは、白血球中のマクロファージが飛び出たヘルニア(髄核)を異物とみなして食べるのである。つまり、自己を守る免疫機構の一つであり、生体がもつ「自然治癒力」の一つなのである。特に私の場合のように髄核が遊離脱出しているタイプは自然消滅することが多いらしい。私は自分のもつ「自然治癒力」を信じたいと思った。

 

    さて、処方してくれた薬が効いてくれることを願って、その夜私は指示された通り消炎鎮痛薬を服用した。ところが、数時間の睡眠時間が取れた後、今までの痛み以上の症状になってしまった。朝の4時過ぎから、今までの鎮痛薬を飲んで効き始めた8時過ぎまでの4時間ほど、左下肢の膝下の部位を襲った激痛に耐え続けた。私は初めの症状に戻ってしまったのではないかと怯え、絶望感に苛まれながらひたすら耐えた。

 

    その最中に私の頭に浮かんだのは、身近に迫る死期を自覚しながら脊椎カリエスによる激痛に耐え続けた病床の正岡子規の姿であった。子規は「病気の境遇に処しては、病気を楽しむといふことにならなければ生きて居ても何の面白味もない」(『病床六尺』75)と書いて、最悪の状態になってなお、現在の不満より楽しさを求めようとした。私は子規のそのような「精神力」に思いを馳せた。その点、私はついつい現状の不安や不満に苛立ち、つまらないことで腹を立てたり自分を責めたりしてしまう。でも、今の私は子規以上の自由がまだ残されている。そこで、痛みが軽減している間に、子規を見習って身近にある楽しさや嬉しさを味わうようにしようと考えた。食欲を満たす食事や知識欲を満たす読書等、今の私に与えられている自由を大いに活かそうと思った。私はそれらを実行するようになって以来、左下肢の膝下を何度も襲ってくる痛みと夜の睡眠不足等を、「精神力」に支えられた平常心で耐えられるようになった。(ある意味、諦観の境地みたいなものになったのかなあ…。)

 

    その1週間後、薬が効いている時の痛みは今までの最高レベルを10としたら4~5まで軽減した。夜はまだまだ睡眠時間が確保できず、日中は杖をついての歩行が余儀なくされている状況に変わりはなかったが、精神的には楽になってきた。これも子規から学んだ「精神力」のお陰だと感謝した。(次回へ続く。)