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医者の本音・ホンネ(3)~どうせ死ぬなら「がん」がいい!?~

    前回の記事の最後に、がん治療に関する「医者の本当のホンネ」を知りたいと書いたが、私のその願いを叶えてくれそうな本を見つけた。それは『どうせ死ぬなら「がん」がいい』(中村仁一、近藤誠著)という新書である。

 

 著者の一人、中村仁一氏は1940年生まれで、京都大学医学部卒業。財団法人高雄病院院長、理事長を経て、2000年2月より社会福祉法人老人ホーム「同和園」附属診療所所長。「がん死のお迎えは最高。ただし、治療しなければ…」と言い続け、2012年1月に出版した『大往生したけりゃ医療とかかわるな』が50万部を超えるベストセラーになった。もう一人の近藤誠氏は1948年生まれで、慶応義塾大学医学部卒業後、同大学医学部放射線科入局。1983年から同大学放射線科講師になり、がんの放射線治療を専門にし、乳がんの乳房温存療法を積極的にすすめた。「がんの9割に抗がん剤は効かない。患者よ、がんと闘うな」と言い続け、まさにその通りの著書『患者よ、がんと闘うな』や『がん放置療法のすすめ』他、多くの著書を上梓している。

 

 本書は、そんな過激なことを口にするお二人の対談をまとめたものである。それぞれ異なった道を歩んできたお二人であるが、結論としては同じようなことを言っている。つまり、「がんで自然に死ぬのは苦しくなくて、むしろラク。がん死が痛い、苦しいと思われているのは、実は治療を受けたためである。そして、検診等でがんを無理やり見つけ出さなければ、逆に長生きできるとも…。」

 

 そこで今回は、そのような結論に至った根拠について私なりにまとめながら、簡単な所感を付け加えてみたい。

 

 まず、「がん死はラクだ」という根拠について。中村氏は「老人ホームで体験した限りでは、がんを放置した場合に患者は例外なく、痛まずに実に穏やかに死んでいく。」と語っている。また、こうも言っている。「個人的には、手術や抗がん剤などで中途半端にがんを痛めつけるから、痛みが出て寿命が縮むんだと確信している。」さらに、近藤氏は「年齢を問わず、少なくとも胃がん食道がん、子宮がん、肝臓がんの四つのがんは放置すると少しずつ体力が衰えて、痛んだり苦しんだりしないで、枯れて眠るような自然な死を迎える。」と話している。

 

 次に、「検診等でがんを早期発見して早期治療をしたために早死にした」という根拠について。近藤氏は、長野県の「がん検診をやめた村」、泰阜村でがん死が明らかに減っている実例を挙げている。それによると、1989年に胃がんや肺がんなどの集団検診をやめたら、88年以前の6年間は胃がん死亡率が全死亡率の6%を占めていたのが、89年以降の6年間は全死亡率の2.2%と半分以下に減ったというデータが出ているらしい。このデータについては、集団がん検診でがんの発見頻度が高まり、がんもどきや潜在がんも「がん」と診断されて、治療の対象になってしまい、結果的に手術や抗がん剤の後遺症も含めた「がん死」が増えてしまうと解釈できるそうである。しかも、「早期発見、早期治療」がいくら増えても、患者の延命には結びついていないのだそうだ。特に「がんもどき」は放っておいても転移も出てこないし、死ぬこともないということが、150人以上のがん放置患者を定期的に診てきて裏付けされたらしい。

 

    また、中村氏はそもそも「早期発見、早期治療」というのは、完治の可能性がある感染症結核で成功した手法だから、がんに対して「早期発見、早期治療」という言葉を使うと、早く見つければ完治するという誤解を与えてしまうと警告している。さらに、「手術というのは、人工的な大けがだから、傷口が痛み、がんがさらにはびこることになる。」と話している。結果として、早期がんでも手術されると合併症や後遺症が非常に大きく、死亡することもあるので、手出しをせずにがんとの共存を心掛ければ、普通は穏やかに死ぬことができるらしい。

 

 本書におけるお二人の対談内容が絶対だとも全てだとも、私は言いたいのではない。また、これらの見解を相対化するために反論を試みている医師の本『「医療否定本」に殺されないための48の真実』(長尾和宏著)等、何冊か出版されている。だだ、「インフォームド・コンセント」という名目で、担当医から説明される治療方針や内容等を丸のみにしないで、この対談内容にあるような実例や考え方を知っておくことは、自分なりの死生観・人生観を大切にした最終的な決断をする上で必要なのではないだろうか。特に、私は「自然死」という概念について強い関心があるとともに、苦痛のない穏やかな死を迎えることができる事例についても知りたい。今後、これらのことについてさらに調べてみたいと考えている。