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「生涯学習」の考え方から発展させた新しい時代の学び方について(1)

 近年、「生涯学習」という言葉を見聞きすることが多い。元々は学校期以後の教育全般については「社会教育」という言葉で表現していたが、昭和40年にユネスコのポール・ラングランが初めて提唱した「生涯教育」という言葉によって、「社会教育」という概念を包含するようになってきた。それが、現在のように「生涯学習」という言葉へと転換したきっかけは、昭和62年に発表された臨時教育審議会第4次答申「個性重視、生涯学習、変化への対応」だったと記憶している。そして、平成18年に改正された教育基本法第3条「生涯学習の理念」では、「国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことができる社会の実現が図られなければならない。」と記され、我が国においても「生涯学習社会の実現」が目指されることになった。

 

 私はこのような我が国における「生涯学習社会の実現」という施策方針については、基本的に大賛成である。ただし、それを公私にわたる様々な教育機関によって提供されているカルチャースクールへ参加することだと表層的に解釈するのなら、それはちょっと違うのではないかと思う。社会人であれ学生であれ、当該のカルチャースクールの講師が用意したプログラムどおりに受動的に何かを習得するだけなら、それは他律的な勉強になり、本来の自律的な学習とは言えないと考えるからである。知識基盤社会と言われる現代社会に生きるためには、一人一人の国民が生涯にわたって自律的に学び続けることは必須の条件になるのである。だとすれば、「生涯学習」の在り方は自分なりの課題意識に支えられた「自律的な学び」を基本にしなければならないのではないだろうか。

 

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 そのような「生涯学習」に対する考え方をもっている私にとって、最近読んだ『0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書』(落合陽一著)という本の主張は我が意を得たりであった。そこで今回は、本書の主張の中で私が特に共感した内容と自分なりの簡単な所感をまとめてみたい。

 

 著者の落合氏は現在、筑波大学准教授・学長補佐であり、メディアアーティストとして、科学者として、事業家として世界的に注目を集めている弱冠31歳の若者である。私が落合氏を知ったのは、知人から氏の著書『日本再興戦略』を紹介されたことがきっかけである。その後、『超AI時代の生存戦略』『これからの世界をつくる仲間たちへ』『10年後の仕事図鑑』(堀江貴文氏との共著)『魔法の世紀』『デジタルネーチャー』『脱近代宣言』(清水高志氏・上妻世海氏との共著)『日本進化論』等を読み漁り、氏が「現代の魔法使い」と言われる所以やその才能がよく分かった。最近はnews zeroのコメンテーターやNHKの特集番組のMCなどに起用されるようになり、マスメディアに露出する機会が増えている。その彼が人生100年時代において、どうすれば社会に出た後も学ぶ意欲を持ち続ける人間を育てられるのかという課題意識をもちながら、新しい時代の学び方について提案したのが本書なのである。

 

 著者の様々な主張の中で私が特に共感したのは、「生涯を通じて学ぶことを楽しみ、その自分の学びを社会に役立てられるようになれば、学ぶことそのものがライフスタイルとなる。」という内容。そして、その学びのモチベーションを喚起するきっかけになるのは、「好きなこと」「やっても苦にならないこと」であるから、将来仕事になるような、そして自然に続けられる趣味を小さい頃からもっておくことを勧めている。大事なのは、小さい頃から自分は何が好きなのかを常に考え続けること。著者は「ずっと続けられるような好きなことを仕事にし、高いモチベーションを維持しながら働ける人は、他の人にはないオリジナリティを発揮できるため、これからの社会で生き残り続ける。」とも言っている。このように自然体でいられる行動を仕事にする方法を見つけられれば、ストレスなく呼吸をするように働くことができる。つまり、自律的に学び続けることと、楽しく仕事をしながら生きることが等号で結ばれるのである。著者は、これを著者は「ワークアズライフ」と呼んでいる。私は、この考え方を「学び続けること=仕事をすること=生きること」の三位一体論と呼びたいと思う。

 

 では、一人一人の国民に「ワークアズライフ」の生き方や「学び続けること=仕事をすること=生きること」の三位一体論の考え方を保障するためには、これからの学校教育の在り方はどうあればよいのであろうか。この問いに対する回答についても、本書から多くのヒントを得ることができる。では、それはどういう内容なのか。…と論を進めたいところだが、残念ながら今回は私の勝手な都合による時間不足になってしまったので、具体的な回答内容を示すのは次回に繰り越したい。悪しからず…。