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看護科の学生を対象にした「役に立つ読解力を身に付けよう」という特別講義を行いました!

 今月21日(火)の午後、地元の市立大学看護学部看護学科の1回生35名を対象にした特別講義「役に立つ読解力を身に付けよう」を行った。教室空間で教科の授業を行ったのは、何年ぶりだったろうか。小学校の教頭職の時、「習字」の授業を行って以来だから、およそ13・4年ぶりかなあ。授業の最初に出欠確認をする際には、何ともいえぬ緊張感を意識した。そのような私を凝視していた学生たちも表情が強張っているように感じた。「いかん、いかん。この歳になって、情けないぞ。」と私は心の中で自分に活を入れた。

 

 最初の講義なので、まず私の自己紹介から始めた。7年ほど前に、市内のある小学校に校長として着任して臨んだ新任式で、その後子どもたちが私をフルネームで呼んでくれるほど記憶に残ったあいさつ内容を紹介した。それは、イソップ童話の中でもよく知られている「ウサギとカメ」の話を使った自己紹介だった。学生たちもそのダジャレ的な内容を笑顔で受け止めてくれた。この辺りで私の話術はいつもの調子になり、精神的にも落ち着きを取り戻してきた。それに対応するように、学生たちの表情も柔らかくなったようだ。

 

 その和やかな雰囲気を生かして、次に、「読解力」に係わる学力テスト問題やあるリーデングスキルテスト問題、そして私が勤務している公益財団法人が主催している幼児対象のイベントの参加料計算問題を、学生たちに約15分間で解いてもらった。私はその間、机間巡視をしながら、学生たちの解答内容を確認してみた。すると意外にも苦戦している学生が多かった。特に、慣用句を使った短文づくりや参加料計算問題。なぜ参加料計算問題が「読解力」に係わるのか不思議に思った方もいるのではないか。その理由はこのイベントチラシの中に参加料規定が書かれていて、「未就学児」とか「2歳以上」「1歳未満」とかの規定に応じて計算しなくてはならないので、テクスト(情報)の中から問題解決に必要な情報を取り出し、それを正確に読み取る過程が含まれているからである。

 

 学生たちが概ね自分なりの解答を書き込み終えたのが、ちょうど約15分経った頃だったので、順次答え合わせをしていった。その中で、学生たちと解答内容に絡んだ対話を楽しみつつ、問題文を正確に読み取ることの大切さや、その際に語彙力が必要になることを事例を通して意味付けていった。学生たちは今まで概念的には分かっていた「読解力」の内容を、具体的な事例に即応して理解を深めていったようだった。

 

 そこで、今度は「読解力」を活用して解く必要がある看護師の国家試験の過去問題3題に、約10分間でチャレンジしてもらった。今までの国家試験の問題はそのほとんどが4択の選択問題になっている。私は学生たちに「自分が正解だと選択したら、必ずその理由や根拠が言えるように考えておいてください。」と指示した。その後、答え合わせをする際には、学生に解答の理由や根拠を発表させる中で、「QOL」や「Open-ended question〈開かれた質問〉」の概念について、また「8歳児が白血病の終末期で症状が安定していること」の意味について解説を加えながら、選択問題の解き方のポイントを押さえていった。

 

 残り20分になった時点で、時間の都合で後回しにしていた「読解力」の定義について、プレゼンを活用して解説した。社会人になって「読解力」がないと起こる困り事を押さえた上で、特に「PISA型読解力」の必要性について強調した。また、役に立つ「読解力」とはどのようなものかについても具体的な事例を紹介し、「読解力」を身に付けることの必要性をできるだけ実感的に理解させようとした。さらに、新しい国語科の方向性についても触れようと思ったが、最後に自己評価カードを書かせたかったので、次時の最初に取り扱うことにして本時では省略した。

 

 残り5分ほどになったので、最後に学生たちに自己評価カードを書かせた。「まず自己紹介をしてから、本時の講義を振り返って感想を書こう。」と働き掛けていたので、後で書いている内容を読んでみると、短いながらも自分の好きなことや特技などを記入している学生が多かった。また、「国語や読解が苦手だ。」と書いている学生も結構いたが、そのほとんどの子が「本時の講義は楽しかった。面白かった。90分間があっと言う間に感じた。」と書いてくれていたので、私としては疲労感の中にも久し振りの教師としての充実感を味わうことができた。次回は、指導内容をもう少し精選し、できるだけ効率的・効果的な展開になるようにしっかりと授業準備をして臨まなくてはならない。…何だか“教師根性”が蘇って来たような気分である。