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「イメージができない子」に対する支援のあり方について~岡田尊司著『発達障害「グレーゾーン」―その正しい理解と克服法―』から学ぶ』~

 4月中の勤務内容はまだほとんどが「研修」なので、今まで気になっていたことについて考えを深めてみようと思い、最近購入した『発達障害「グレーゾーン」―その正しい理解と克服法―』(岡田尊司著)を読み進めた。本書は、発達障害の徴候はあるが診断は下りない「グレーゾーン」の人が、時には診断が下りている人よりも深刻な事態に陥っており生きづらくなっている実態を報告し、その正体と対策について分かりやすく解説している。私が気になっていたのは、今まで教育相談を受けた子どもの「困り感」の中で今一つ支援内容がすっきりとしていなかった「イメージができない」という特性についてなのだが、本書には「グレーゾーン」の人の一タイプとして「イメージができない人」を取り上げていたのである。

 そこで今回は、本書の中で解説されている「イメージができない人」に関する内容の概要をまとめ、その支援のあり方について私なりに学んだことを反省的に綴ってみたい。

 

 筆者はまず、発達検査の代表的なウィクスラー式(今は「WICS-Ⅳ」がよく実施されている)における4つの能力の指標の中で、イメージで考える能力の指標を示しているのが「知覚統合」(「知覚推理」という言い方も使われる)であることを示し、解説の中でそれは「目の前にないものをイメージ化、図式化し、それによって推論や思考を行う能力」に関係していると述べている。具体的には、物理的な現象や複雑な数学を図で表すことで理解し、答えを導き出す能力を例示している。

 

 次に、この「知覚統合」の数値が低いと、次のような「困り感」が起きると述べている。

① 図形や物理的な思考が苦手である。

② 周囲の状況や言外の意味を読み取ったり、語られない意図を察知したり、状況判断したりすることが難しい。

③ 主観的な視点にとらわれてしまい、客観的にものごとを俯瞰するということが難しい。

 

 さらに、「知覚統合」に問題がある代表的な2つのケースを、次のように紹介している。

① 「知覚統合」の低下と共感性の低下の両方があるケース…言語や記憶が弱いASD(アスペルガー)タイプ。図形や高度な数学、物理や工作が苦手なだけでなく、状況判断や場の空気を読んだりするのも苦手。

② 「知覚統合」は低いが、共感性には問題がないタイプ…言語や聴覚が強い文系脳のタイプ。図形や地図、工作は苦手で、折り紙の折り方や家具の組み立て方を説明した図を見てもよく分からないし、ものごとを感情的にとらえすぎるため客観視が苦手だが、場の空気を読んだり、表情から相手の気持ちを察したりすることは問題なくできる。数学や物理、図形や地図が苦手で、ものごとを論理的に組み立てることもあまり得意ではない。

 

 最後に、「知覚統合」を鍛える次のような具体的な方策も紹介している。

① 幼いうちからブロック玩具やパズルに親しむことが有効。将棋やオセロ、ボードゲーム、パズルゲームもよい。

② 日頃から文章や聞き取ったことを図式化して整理する作業もよい。

 

 以上のような内容を読んで、私は今まで「イメージができない子」に対して担任や保護者へアドバイスした支援内容等を振り返ってみた。例えば、「算数の文章題を読み取れずに解答できないという子」には、「文章題の割り当て文や関係文、質問文ごとにその状況を絵や図に表して、そのイメージを<見える化>してから立式して解くようにする」という支援内容。また、「図画工作科の空想画を描くことができないという子」には、「モデルになる絵を示して、まずはそれを真似て描き始めるようにする」という支援内容。

 

 一つ目の支援内容は上述の①の方策と類似した者でもあるので、ある程度の妥当性はあるかもしれない。しかし、二つ目の支援内容はイメージができないのならモデルを直接見せて真似させるというものであり、その妥当性について自信がない。だだ、私としてはこの支援内容は題材のねらいとは違うかもしれないが、苦手なことを無理にさせないことで自己肯定感を低下させない方策の一つになると考えているので、大切な支援ではないかと思っている。また、上述の②の方策のように、遊びを通してイメージ力を培うというものは、特に家庭で取り組む支援内容として有効だと思った。

 

 4月末から始まるゴールデンウィーク後には、各学校から教育相談の申請書が提出されてくる見通しなので、もう少し「イメージができない子」に対する支援のあり方について、他の文献にも当たりより妥当性のある支援内容を考えておきたい。取り敢えず9連休のゴールデンウィークは久し振りにゆっくりと休養して英気を養いたいと思っている。でも、娘たちや孫たちが遊びに来たり、妻から何かと雑用を言い渡されたりしているので、この目論見はどうなることやら・・・。