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哲学対話で「探究による学び」を探究しました!~「第7回愛媛の探究をつくる会」より~

 12月15日(金)18:30~20:00、愛媛大学教育学部附属小学校の1年教室で、「第7回愛媛の探究をつくる会」が開催された。今回は、『「探究による学び」を探究しよう』というテーマで、私がファシリテーターになって哲学対話をするという企画であった。参加者は、愛媛大学教育学部教授1名、愛媛大学教育学部附属小学校教諭3名、愛媛大学教職大学院生4名(内1名は記録者)、松山大学の学生3名だったので、私を含めて12名。いつもよりは少ない参加者数だったが、本会で初めての哲学対話だったので、気軽に安心して話すことができる環境であるという点で結果的に適当な人数だった。

 

 高校の教員を目指しているという松山大学の学生たちは初参加だったので、まず簡単な自己紹介を順番にすることにした。しんがりは私がして、その流れで、当ブログの以前の記事『「哲学対話」って、どのようなものなの?~梶谷真司著『考えるとはどういうことか―0歳から100歳までの哲学入門―』を参考にして~』の印刷物に基づいて、「哲学対話」のオリエンテーションを行った。その後、3~4名程度のグループに分かれてテーマに関連した問いを出し合う場を設定した。すると、どのグループの話合いでも「探究による学びのイメージはどんなものなのか?」という問いに収斂していったので、今回の「問い」はこれに決まった。

 次に、机を教室の前後左右に移動して、各自の椅子を中央に輪になるように並べてもらってから、いよいよ哲学対話を始めた。口火として、グループでどのような話合いをしていたのかを、私から大学生たちに訊いた。すると、「探究は、今までの授業のように教師から教えられる内容を理解したり記憶したりするような学びではなく、自分から調べたり考えたりする学びだと思う。」「探究を辞書で調べると答えを自分で探して研究するというような意味だったが、もう少し学びのイメージを具体化したい。」「探究は、自分が疑問に思ったことを追究する学びだと考えている。」などと、発言してくれた。

 

 そこから、次々と参加者が発言してくれて、哲学対話は少しずつ熱を帯びてきた。その対話の内容を全て詳細にまとめることは難しいので、次に主な発言内容を列挙しておきたい。

〇 自分が経験した「総合的な学習の時間」は、教師の敷いたレールに沿って調べ学習をしていたように思う。調べ学習をしてまとめた後に、様々な疑問や問いが生まれてきたが、それについて調べさせてもらえなかった。だから、「探究による学び」とは言えないのではないかと思う。

〇 探究による学びというのは、単なる調べ学習ではないと思う。

〇 探究による学びは、子どもが自分の気になることや疑問に感じることを自己選択・自己決定して、それを追究することを保障するものだ。

〇 一人一人に探究的な学びを保障するには、教師が一人一人の学びを適切に支援することができる人間理解力や教材解釈力を持つことが求められる。

〇 現在進めている「総合的な学習の時間」の単元では、地域のことを知り、地域の人々と関わっていく中で、次々に新たな課題が見つかり、それを解決する学びが発展的に連続している。

〇 探究による学びは、自分事として本気で調べたり考えたりする学びであり、すぐに解決するものではなく、次々とオープンエンドに続いていく学びだと思う。

〇 探究による学びを保障していくと、各教科等の授業の枠を超えていくと思う。

〇 できれば教科の学びも、探究による学びにできるとよい。

〇 教師は、自分でも答えの分からない問いを子どもに向けて発する勇気が必要かもしれない。

〇 「探究による学び」と「探究的な学び」とを区別する必要があると思う。

〇 「探究による学び」というのは発生的な学びで一つの答えに至らないようなもので、「探究的な学び」というのは予定調和的な学びで最終的には一つの答えを目指すようなものなのかもしれない。
〇 「探究による学び」の経験は、楽しく充実感をもたらすもので、時間が経って強く心に残るものである。

 

 以上、主な発言内容の主旨を列挙してみたが、実際の発言の際には自分の具体的な事例や経験等に基づいた意見や感想について発言してくれたので、対話の内容が空中分解するような場面はなかった。ただし、ファシリテーターの私が、個々の発言を受けて要約したり、関連的な内容を付け加えたり、話題の焦点を絞ったりすることが多かったので、この点はもう少し発言量を控えるべきだったかなと今、反省しているところである。

 

 私は哲学対話のファシリテーターを今回初めてしたので、次回へ備える意味で上記以外の反省点を最後にまとめておきたい。

〇 最初にテーマに即した問いを出してもらうために、数人のグループで話し合う場を設定したのだが、その前にもう少し各自で自己内対話をする場を設定する方がよかった。

〇 参加者の中で教職経験者がやや抽象的な発言をする場面があったので、現役の大学生たちのことを考慮して、もう少し具体的な経験を引き出すような問い掛けをするなどの工夫をすべきだった。

〇 最後に、今回の哲学対話に関する感想を何人かの人に述べてもらったが、その内容は今回のテーマや問いに関する自分なりに納得したことであったが、哲学対話を経験した感想も聞くべきだった。