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コロナ禍で開催されていた東京オリンピック2020を振り返って…

 「ゴォーッ、ゴォーッ」という強風の音で目覚めた私は、すぐに階下に降りてテレビのリモコン・スイッチを入れ、NHKの台風情報を見た。8月8日の夜間、九州に上陸した台風9号は、今朝には広島県へ再上陸して北上しているところだった。県下には、まだ土砂災害警戒情報と大雨警報等が発令されており、私が新聞を取りに行こうと玄関を出た際は強風で身体が押されるような感じになった。駐車場を見ると、自転車が倒れていたり、生け花を入れておくためのポリバケツが吹き飛ばされていたりしていた。また、雨は小雨になっているとは言え、横殴りに吹き付けてきて、台風9号の影響はまだ残っている状況だった。

 

    私は朝刊に目を通そうと、急いで家の中に戻った。我が家で購読している地方紙の一面を飾っていたのは、“東京五輪 閉会式”“困難の中 選手熱戦”“感染拡大下「祝祭」に幕”と共に、“バスケ女子 躍進「銀」”の大きな見出しであった。私は前日の東京五輪最終日8日に行われたアメリカとの決勝戦をテレビの前で応援していたので、男女を通じて初めてのメダルを手にした日本女子チームの快挙に心から拍手を送った。オリンピック7連覇を達成したアメリカには負けたが、準々決勝、準決勝と格上の強豪国を撃破して決勝の舞台にまで進出したことは、体格差に劣っている日本女子の高い技術や巧みなチームプレーなどが世界に通用することを証明してくれたと思う。私は日本人として誇らしい気持ちになった。そして、その他の種目の日本人選手の様々な活躍の場面や姿等が想い起されてきた。

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 そこで今回は、17日間実施された東京オリンピックを振り返りつつ、特に私の心に強く残った場面や目に焼き付いた日本人選手の姿等について綴ってみたいと思う。

 

 まず、最初に取り上げたいのは、13年ぶりに採用された「女子ソフトボール」と「野球」の競技である。以前にも当ブログの記事で何度か紹介したが、私は幼いころから草野球に親しみ、中学校・高校と野球部に所属していた。また、教職に就いてからもソフトボールを通じて、教員仲間や保護者、地域の人々等と触れ合う機会をもってきたので、「野球型」のスポーツにはつい関心が向いてしまう。だから、今回の東京オリンピックに復活した両種目においても、開催前から日本の戦いぶりをぜひテレビで観戦し、しっかりと応援しようと決めていた。

 

    「女子ソフトボール」では、予選リーグ第2戦のメキシコ戦において延長タイブレイクの末、3対2でサヨナラ勝ちしたゲームと、同じく予選リーグ第4戦のカナダ戦において再び延長タイブレイクの末、1対0でサヨナラ勝ちしたゲーム、さらに決勝戦において2対0で勝利して13年越しでオリンピック連覇を達成したゲームが、本当に息詰まる試合展開であり、私の心に印象強く残った。各試合で先発した上野由岐子投手の成熟した巧みな投球は素晴らしかったが、それ以上に上野投手を救援した左腕の後藤希由投手の力強い投球は頼もしかった。上野投手の後継者として期待される逸材だと、私はそのマウンド度胸と切れのある球筋を見て思った。私の心の中では後藤投手こそ、日本チーム連覇の立役者である。

 

 「野球」(侍ジャパン)では、オープニンググラウンド第1戦のドミニカ戦において最終回に一挙3点を奪い、4対3でサヨナラ勝ちしたゲームと、ノックアウトステージ準々決勝のアメリカ戦において延長タイブレイクの末、7対6でサヨナラ勝ちしたゲーム、また同じく準決勝の韓国戦において同点で迎えた8回裏、山田哲人選手の殊勲の3点適時打によって5対2で勝ったゲーム、さらに決勝戦で再び対戦したアメリカ戦において2対0でアメリカを完封して悲願の優勝を達成したゲームが、大変な緊張感のある試合展開であり、私の心に印象強く残った。各試合ともいい場面で適時打を放った打者たちによって勝利をもぎ取った訳だが、私はやはり先発・中継ぎ・抑えの役割をしっかり果たした投手陣を称賛したい。特に守護神として緊迫した場面で力投した栗林良吏投手の活躍は、本当に素晴らしかった。私の心の中では栗林投手こそ、侍ジャパン悲願の優勝の立役者である。

 

 「女子ソフトボール」も「野球」も、個々の選手の高い技術と逞しいメンタルによって優勝を勝ち取ったのは間違いないが、やはりチーム・スポーツの競技なので「信頼感に支えられたチームワーク」こそが優勝の原動力になったと思う。両種目とも、様々な国際大会を経験しているベテラン選手とその経験の浅い若い選手が、うまく噛み合って機能するようなベンチワークも光っていた。「女子ソフトボール」の宇津木監督と「野球」の稲葉監督の優勝に賭ける熱い思いと、各選手の技量や特性等を熟知した上での巧みな起用術、そして選手の自主性を尊重したチーム作りなど、その指揮官としての高い資質を賞賛すべきであろう。

 

 次に取り上げたいのは、メダル獲得は確実だと前評判が高く、オリンピック開催前からメディアに注目されていながら、その期待に十分応えられないまま終わってしまった選手たちである。競泳男子の200mと400mの個人メドレーリレーに出場した瀬戸大也選手、体操男子の鉄棒に出場した内村航平選手、バドミントン男・女シングルスに出場した桃田賢斗選手や奥平希望選手・山口茜選手、トランポリン女子に出場した森ひかる選手、さらに陸上男子100×4mリレーに出場した多田修平選手・山県亮太選手・桐生祥秀選手・小池祐貴選手、等々。新型コロナウイルスの感染拡大のために、1年延期されて開催された東京オリンピック。汗にまみれ血を流すほどの猛練習を繰り返し、メダル獲得の期待というプレッシャーとの闘いを続けてきた5年間の努力が、結果として報われなかった選手たち。きっと私たちには分からない口惜しさと悲しみに、打ちひしがれているに違いない。でも、そんな彼らに私は言いたい。「切望した結果は得られなかったかもしれないが、それを目標にして励んできた日々はあなたという人間を大きく成長させてきた足跡である。この経験は、必ず今後の人生の大きな糧になる。否、糧にしなければならない。人生には決して無駄なことはないぞ!」彼らのこれからの人生に幸多かれと、私は心より願うばかりである。

 

 最後に、開催の是非についても様々な意見があり、開催の有無自体がなかなか決められなかった事情があった上、コロナ禍にあって無観客で開催されることになり、さらにバブル方式という閉鎖的な空間で自由な行動が制限された選手たちには、本来の実力を出し切れなかった東京オリンピック2020になったかもしれない。でも、それにも拘らず、自己の精一杯のパフォーマンスを発揮すべく、最大の努力を傾けて競技を行った全ての各国各地域の選手たちに対して、心からの敬意を表したい。また、本大会を陰になって支えてくださった多くの医療関係者やボランティアなどの方々に、心から感謝の意を述べたい。お陰で私はテレビ観戦ではあったが、アスリートたちの懸命な姿から多くの「勇気」と「希望」をいただいた。本当にありがとうございました。