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ストレッチの効果とその科学的根拠について

   以前、NHK教育テレビの健康番組で「運動前のストレッチは逆効果になる場合がある!」と言っているのを聞いたことがあった。その時はあまり気にすることはなかった。しかし、私は現在の職場で実技系のスポーツ教室を担当することがあり、準備及び整理運動にストレッチを取り入れていた。私の頭の中では、「このストレッチは本当に効果があるのか。もしかしたら、逆効果になる運動を指導しているのではないか。」という不安が渦巻くようになったが、多少の後ろめたさを感じながらも以前と同様の指導を行っていた。

 

    そんななか、休日に自宅近くの書店に行き新書を並べている書棚を何気なく眺めていたら、『運動前のストレッチはやめなさい』(中野ジェームス修一著)が目に止まった。私は早速、むさぼるように読んでみた。「目から鱗が落ちる」内容だった。

 

 そこで、ここでは本書の内容の一部を紹介するとともに、私の心に印象深く残っていることを主とした所感をまとめておきたい。

 

    著者は、冒頭「ほとんどの人がストレッチのやり方を間違えています。」と警告している。具体例としては、今まで私も行っていた「アキレス腱が切れないようにストレッチをして伸ばしておくこと」「運動前のウォーミングアップのためにストレッチをすること」等の事柄を挙げている。そして、それらの事柄がなぜ間違っているのかの理由を、科学的根拠に基づいて丁寧に説明している。

 

    まず一番目の事項について。そもそも「腱(テンドン)」は筋肉と違って伸びない。私たちがよく行っている「アキレス腱伸ばし」は、多くの場合ふくらはぎにある「下腿三頭筋」をストレッチしているのであり、それがアキレス腱断裂の予防に直接つながるという科学的根拠はないとのこと。

 

    次に二番目の事項について。ウォーミングアップは筋肉を傷つけないように、運動前に身体を温め、全身の筋肉の血液循環を良くしておくことで、運動のパフォーマンスを向上させる効果がある。しかし、静的なストレッチでは筋肉は温まらないので、ウォーミングアップにはならないのである。ただし、筋肉や関節をダイナミックに動かす動的ストレッチ(ダイナミック・ストレッチ)は、ウォーミングアップとして使えるとのこと。

 

   なお、二番目の事項に関連して「ストレッチによる筋力低下」現象についても言及している。この現象が起きる理由の一つは、筋肉を静かに伸ばし続けると、筋肉がゆるむからである。もう一つは、ストレッチをすると一時的にサルコメア(筋肉の最小単位=筋節のこと)などが引き伸ばされ、筋力が発揮しにくくなるからである。様々な実験結果を踏まえると、「ストレッチをしてから5~10分ほどおいてから本格的なトレーニングや運動をすると、筋力本来のパフォーマンスを発揮できる」らしい。心しておきたいものである。

 

 最後に、ストレッチの最大の効果は柔軟性の向上であり、このことだけで運動のパフォーマンスが上がるわけではなく、スポーツ障害の予防につながるという科学的根拠もないことを再確認しておきたい。では、なぜストレッチが推奨されているのか。その一番の理由は、筋肉が硬く緊張をし続けていると生じる肩こりや腰痛といった不快感の軽減に役立つからである。だとすれば、ストレッチは健康な身体づくりとして取り入れる方が理に適っていると言える。自分の筋肉や関節の柔軟性をセルフチェックして、劣っている部位を効果的にストレッチする実践方法を体得することが、特に高齢者には必要になってくる。

 

    私も日々、暇があれば自分なりにアレンジしたストレッチを取り入れて実践することで、肩こりや腰痛を予防している。そのお陰か体調は概ねよく、健康な生活を送れている。今後もいろいろと勉強して、よりよい健康法を身に付けたいと思っている。