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「人生・生き方」「教育・子育て」「健康・スポーツ」などについて考え、雑学的な知識を参考にしながらエッセイ風に綴るblogです。

人生・生き方

日本には「愛」が存在しなかった?!~長谷川櫂著『俳句と人間』から学ぶ~

私は、「プレバト!」というテレビ番組をよく観る。特に、梅沢富美男氏や東国原英夫氏などの芸能人がお題に沿って創作した俳句を、講師役の夏井いつき氏が「才能あり」「凡人」「才能なし」とランク付けし辛口で批評する俳句査定のコーナーが好きである。俳…

「食べる」ことについてちょっと考えた~吉村萬壱著『生きていくうえで、かけがえのないこと』を読んで~

『生きていくうえで、かけがえのないこと』という本を当ブログの以前の記事(2021.8.19付)で取り上げたことがある。ただし、その時の著者は批評家の「若松英輔」氏であったが、今回は芥川賞作家の「吉村萬壱」氏である。なぜ二人が同じタイトルの…

「未来への責任」を問う倫理学の全体像について~戸谷洋志著『ハンス・ヨナスの哲学』から学ぶ④~

なかなか筆が進まない。つくづく自分の理解力と文章力の乏しさを痛感する。しかし、老年を迎えて認知機能の衰えを少しでも遅らせようと始めたブログ記事の執筆。自分の課題意識に即して読んだ(インプットした)本を取り上げ、その内容概要や読後所感等を綴…

存在と当為を結びつける「責任」という概念について~戸谷洋志著『ハンス・ヨナスの哲学』から学ぶ③~

いよいよ今回から2回続けて、『ハンス・ヨナスの哲学』(戸谷洋志著)を再読しながら、彼が独自に構築した倫理学の全体像の概要をまとめてみようと思う。ヨナスは、前回までの記事にまとめた「哲学的生命論」と「哲学的人間学」を理論的基盤にして、「未来…

「未来への責任」を問う倫理学のもう一つの理論的基盤「哲学的人間学」について~戸谷洋志著『ハンス・ヨナスの哲学』から学ぶ②~

前回に続いて、「ハンス・ヨナス」が構築した「未来への責任」を問う倫理学の理論的基盤について綴ってみたい。前回はその一つ「哲学的生命論」の内容の概要をまとめてみたが、今回はもう一つの「哲学的人間学」の内容について、『ハンス・ヨナスの哲学』(…

「未来への責任」を問う倫理学の理論的基盤の一つ「哲学的生命論」について~戸谷洋志著『ハンス・ヨナスの哲学』から学ぶ①~

マルティン・ハイデガー著『存在と時間』を取り上げた4月の「100de名著」の番組の中で、指南役の戸谷洋志氏が「ハンス・ヨナス」という哲学者の業績等について解説しているのを視聴して、私は彼のことを初めて知った。師であるハイデガーから多大な影響を受…

<支援>と<共治>を志向する教育委員会のあり方について~山口裕也著『教育は変えられる』から学ぶ~

今年のゴールデンウィークも終わり、気が付けば5月も中旬になっていた。何らかの「困り感」をもつ子どもの学級担任や保護者に対する「教育相談」業務が少しずつ増えてきて、特別支援教育指導員としてやっと腰が落ち着いた勤務状況になってきた。ただし、通…

自分らしい生き方を探り出すために求められる「先駆的な決意性」について~「100de名著」におけるハイデッガー著『存在と時間』のテキストから学ぶ~

5月2日(月)を年休にしたので、私のゴールデンウィークは4月29日(金)から5月5日(木)までの7日間だった。その間、二女と孫Mが一泊したり、長女と孫Hが日中遊びに来たりしたので、久し振りに二人の孫たちとじっくりと関わる時間が取れた。満1…

「栗本慎一郎」から受けた思想的インパクトを回想する!~仲正昌樹著『集中講義 日本の現代思想―ポストモダンとは何だったのか―』を再読して~

私は千葉雅也著『現代思想入門』を読んだことをきっかけにして改めて日本における「現代思想」について振り返ってみたくなり、書棚に並べていた仲正昌樹氏の著作群の中から『集中講義 日本の現代思想―ポストモダンとは何だったのか―』を取り出し、先月中旬頃…

山間部の中学校に勤務していた頃の苦い経験を振り返る!~池永陽著『青い島の教室』をきっかけにして~

当ブログの以前の記事(2020.7.28/2021.5.16付け)で取り上げた『コンビニ・ララバイ』や『珈琲屋の人々』シリーズの著者である池永陽氏の『青い島の教室』という作品を読んだ。都内の中学校で体罰問題を起こし、伊豆諸島の離れ小島に飛…

グレーゾーンにこそ<生きること=学ぶこと>の醍醐味がある!~千葉雅也著『現代思想入門』の「はじめに 今なぜ現代思想か」に共感して~

最近、私のTwitterのタイムラインで評判になっている『現代思想入門』(千葉雅也著)を読んでみた。今、再度読み直しているのだが、改めて「はじめに 今なぜ現代思想か」の内容が私の心に深く沁み込んでくる。というのは、今から約30~40年前に私が地元…

脱原発を志向する哲学とは?②~國分功一郎著『原子力時代における哲学』から学ぶ~

前回は、私の原子力に対する認識の再構成を図るきっかけにすべく読み始めた『原子力時代における哲学』(國分功一郎著)の本編前半の概要についてまとめた。まず、核兵器に対する絶対的な拒否の半面、「原子力の平和利用」という原発については大勢が受け入…

脱原発を志向する哲学とは?①~國分功一郎著『原子力時代における哲学』から学ぶ~

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって約3週間が過ぎた。ウクライナ軍の思わぬ抗戦に遭って戦争が長期化してきたために、プーチン大統領は当初の思惑とは違った展開になり焦っているのではないか。国際的な非難はもとより、膨大な軍事費や国内経済…

「解離性障害」って何?~柚月裕子著『ウツボカズラの甘い息』を読んで~

ロシアによるウクライナへの武力侵攻が激化し、3月4日には稼働していたウクライナ南部にある欧州最大級のサポロジェ原発を砲撃し、制圧した。稼働原発への軍事攻撃は史上初であり、もし誤って稼働している原子炉を砲撃していたら1986年のチェルノブイ…

ネットなどの二次的情報の後追いへの偏重に気を付けて!~養老孟司著『子どもが心配―人として大事な三つの力―』から学ぶ~

長年愛用している腕時計の電池が切れて針が動かなくなったので、近くのイオンモールに入っている時計店へ持って行った。電池を入れ替えてもらっている間に、階上のフロアに入っている書店で新刊の本を物色していたら、気になる新書を見つけた。東京大学名誉…

出臍コンプレックスについて~帚木蓬生著『風花病棟』所収「チチジマ」に触発されて~

今年の1月、埼玉県ふじみ野市の住宅地で、男が散弾銃を発砲し、在宅クリニックの医師を殺害するという事件があった。殺された医師は、その人柄や診療振りが地域の人々や患者から評判のよい良医だったという。長らく介護していた母親を事件前日に亡くした容…

発達障害のある子の育て方で大事なポイントについて~本田秀夫著『子どもの発達障害―子育てで大切なこと、やってはいけないこと―』から学ぶ~

昨日、新型コロナウイルスの第3回のワクチンとして半分量のモデルナを接種した。テレビニュースによると、「第1・2回がファイザー、第3回がモデルナという交互接種による抗体の増え方は第3回もファイザーを接種した場合よりも約1.5倍あるが、副反応…

哲学とは何か?~萱野稔人著『哲学はなぜ役に立つのか?』から学ぶ~

私は今までの人生において様々な困難に出合った時、それをどのように克服すればよいかと思案する中で、ともすると安易で短絡的な解決策を取ろうとする気持ちが起きることがあった。しかし、その度に「それでいいのか。その解決策は自分の良心に恥じない選択…

「伝達>生成」モードの授業を「伝達<生成」モードの授業へと転換していこう!~伊藤亜紗著『手の倫理』から学ぶ~

当ブログの2021年9月19日付けの記事で、『日本哲学の最前線』(山口尚著)という新書を取り上げた際に、日本の「J哲学」の担い手の一人である美学者・伊藤亜紗氏の『手の倫理』について言及した。記事の中で、私は本書で使用されていた「道徳」と「…

コロナ禍で「濃厚接触」という言葉の導入がもたらした副作用について~古田徹也著『いつもの言葉を哲学する』から学ぶ~

新型コロナウイルスのオミクロン株の感染力がすごい。東京都はあっという間に過去最高の1万人超えになり、本県でも過去最高の新規感染者数を連日記録している。今のところ重症化するリスクは低く、無症状や軽症の陽性患者が多いらしい。しかし、だからとい…

生活保護受給者のケースワーカーの矜持とは?~柚月裕子著『パレートの誤算』を読んで~

懲りもせず、また読んでしまった。…私はある小説家の作品を最初に読んで気に入ったら、その人の他の作品も読んでみたくなり、機会を見つけては次々と読んでしまう癖がある。年初めの勤務日の昼休みに職場近くの市立図書館で借りて、ここ一週間ほど同時並行で…

町内に駄菓子屋さんがあった頃の思い出、あれこれ~上原隆著『こころが傷んでたえがたき日に』に触発されて~

「成人の日」の祝日を含んだ先週末からの三連休は、フジグランやニトリなどへ妻と一緒に日用雑貨やソファベットを買いに行ったり、久し振りに孫Hが「ランバイク」(商品名「ストライダー」)専用のコースを設置しているオフィシャル・パーク「マテラの森」…

「吃音」が出る時とその対処法について~伊藤亜紗著『どもる体』から学ぶ~

新年が明けて2日のお昼には長女夫婦と孫Hが、3日のお昼には二女夫婦と孫Mが、年始の挨拶代わりに我が家を訪れて一緒におせち料理やお雑煮等を味わってくれた。老夫婦だけの食卓とは違い、正月らしい賑やかな食卓になった。また、それぞれの孫と一緒に遊…

教育相談における「エビデンス」の問題について考える~國分功一郎・千葉雅也著『言語が消滅する前に』から学ぶ~

12月中旬に、昼休みの時間を利用して散歩がてら職場近くの大型書店へ出掛けた際に、興味深い本を見つけた。それは『言語が消滅する前に』(國分功一郎・千葉雅也著)というちょっとショッキングな書名の新書版だった。私の手は自然と伸びて、本書の目次ペ…

どんな時に「吃音」が出るのか?…~重松清著『きよしこ』と重松清・茂木健一郎の対談『涙の理由―人はなぜ涙を流すのか―』を再読して疑問に思ったこと~

今月18日(土)の夕方、NHK総合1で「吃音」のある少年が様々な経験をしながら成長していく姿を描いた小説を映像化した、土曜ドラマ『きよしこ』の再放送があった。最近、「吃音」のある年長の男児の保護者から適切な学びの場について教育相談を受けた…

紅葉の美しさで有名なお寺で再開した二人の孫たち~久し振りに家族が揃った日の充実感~

12月最初の土曜日、私たち夫婦と長女、その長男(私たちにとっての初孫H)の4人、そして義母と義姉夫婦の3人は、二女夫婦とその長男(私たちにとっての二人目の孫M)の住む市をそれぞれの自家用車で訪れ、リーガロイヤルホテルの中の食事処で昼食を取…

<身分け構造>と<言分け構造>をもつ人間の在り方について考える~丸山圭三郎著『フェティシズムと快楽』を再読して~

当ブログの前々回の記事において、『ポストコロナの生命哲学―「いのち」が発する自然(ピュシス)の歌を聴け―』(福岡伸一・伊藤亜紗・藤原辰史著)を取り上げ、<第2部 鼎談・ポストコロナの生命哲学 第6章 身体観を捉えなおす>における鼎談内容の概要と主…

「吃音」って、どのように克服するのだろうか?~伊藤亜紗著『記憶する体』(エピソード10「吃音のフラッシュバック」)を読んで~

学校で様々な「困り感」をもつ子どもの適切な学びの場や、その子の特性に応じた学校や家庭での支援の工夫等に関する教育相談を行う仕事をするようになって、約4か月半。改めて、様々な「困り感」をもつ子どもたちは、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠…

小説家で戯曲家でもある「柳美里」という人間について~柳美里著『南相馬メドレー』を読んで~

今の勤務場所に近い市立中央図書館が数か月ぶりに再開したので、私は昼休みの時間を利用して自転車を走らせた。そして、仕事に関連した『イラストでわかる特別支援教育サポート辞典―「子どもの困った」に対応する99の事例―』(笹森洋樹編著)と、趣味に関…

時代小説の新たな地平を拓く青山作品の魅力について…~青山文平著『遠縁の女』を読んで~

私の睡眠時間は、平均すると約5時間である。日によって多少時間のずれはあるが、午後11時頃に入眠して午前4時頃には目が覚める。目が覚めた後は何をしているかというと、枕元に置いている電気スタンドのスイッチを押して点灯し、寝る前に読んでいた本の…